表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/391

M-166 迎撃地点に到着


 積荷の搬入に一夜を明かした感じだ。

 軍の拠点に到着した2日後の1000時に、ブラウ同盟のレッド・カーペット相当軍となるウエリントン王国軍の軍艦と共にリバイアサンは東へと進んでいく。

 補給船や重巡の速度とリバイアサンの速度が大して変わらないのも都合が良い。


重巡2隻に巡洋艦が3隻、軽巡4隻に駆逐艦8隻は、1個機動艦隊の半分以上を出してきた感じもする。軍艦の間にグラナス級の大型輸送船が2隻随伴しているし、重巡はダモス級の中型輸送船を鎖で繋いで曳いている。

 廃棄寸前の輸送船を買い取ったようだ。

 自力航行が出来ずに曳航されているけど、躯体は片舷を鉄板でさらに補強してあるし、内部には資材を乗せた戦機輸送船が2隻ずつ搭載されている、とフェダーン様が教えてくれた。

 

 新たな飛行船は深夜に2隻で到着したらしい。

 カテリナさんやガネーシャを下ろして、マルトーン王国に向かって飛び立ったようだ。

 先ずは孵化の様子を探るのだろう。

 導師はコリント同盟諸国にも名声が及んでいるらしい。

 神殿内の高位神官とも親しいらしいから、導師の訪れは歓迎されるんじゃないかな。


「残りが1か月もあるように思えるけど、それほど時間はないのよ。孵化の予想なんて、かなり眉唾だから、最大20日ぐらいの前後はあるんじゃないかしら」

「まあ、ここまで来たのだ。前回よりは遥かに条件が整っている。犠牲者を削減すれば王宮内で大規模な宴会が開かれるぞ」


 フェダーン様もカテリナさんも、とりあえずの仕事はないらしい。

 おかげでプライベート区画でのんびりしている俺を相手に、遊んでいる感じなんだよなぁ。


「結局、あの大きな火炎爆弾はいくつできたのだ?」

「1500というところかしら。既存の飛行機では運べないし、飛行船の爆弾懸架装置にも形が合わないから、リバイアサンの飛行機に搭載することにしたわ。80ケム(120km)先を攻撃できるわよ」

「1個小隊に満たなかったようだが、数発でもありがたいところだな。50ケム(75km)先とすれば、第1陣の前方をカバーできそうだ」


 カテリナさんの端末のような魔法具を使って仮想スクリーンを開いたのだが、その映像は線と円があちこちに記載されている。

 それを見ながらの会話だとすると、この変な図は攻撃範囲を示しているのかもしれないな。

 砲だけでも何種類かに分けられるし、飛行機の行動半径がある。

 これを見ながら状況を判断することになるのだろうが、俺なら最初から放棄してしまいそうだ。


 リバイアサンが東進を始めて4日目。

 ナルビク王国の1個機動艦隊が合流した。戦艦が2隻とはねぇ。フェダーン様の話では王国防衛艦隊の一部が加わったらしい。


 8日目に、エルトニア王国軍が加わる。

 さすがに自国防衛が優先されるから、半個艦隊ではあるんだが、2個艦隊で自国を守らねばならない。かなり苦戦するかもしれないな。


「同盟軍ではあるが、2個艦隊と言うところだ。艦の間隔を密にできぬところが問題だな」

「昔も似た感じでしょう? 強いて言うならウエリントン王国の艦隊規模が倍になるぐらいだと思うけど」


「リバイアサンなら、1個艦隊を越えるであろうよ。阻止能力だけで巡洋艦十数隻だからな」


 離着陸台を展開して、リバイアサンの後方に並んだ艦列を眺めながら、3人でワインを頂いている。

 壮観な眺めだな。この艦隊の総司令官がフェダーン様になるのか……。


 たまに飛行機が離着陸をするので、離着陸台の右先端部にテーブルと椅子を用意しての状況確認の筈だったんだけどなぁ。

 いつの間にか、ワイングラスを手にしていた。


「明日には到着しよう。それにしても、戦艦は最大速度で随伴しているのではないのか?」

「リバイアサンの現在速度は毎時16ケム(24km)ですから、最大ではないでしょう。もう、2ケムは出せるはずです」


 1人だけ、コーヒーを飲んでいるフェダーン様の副官が答えてくれた。

 俺もコーヒーの方が良かったんだけどなぁ。


「ところで、第2陣の騎士団は既に出立したのでしょうか?」

「我等より3日先行しているぞ。すでに予定地点に到達し、大規模騎士団を中心に楔型陣形を作っているらしい。前例では横1列なのだが、その陣形も良いかもしれんな」


 騎士団の前方30kmに俺達は陣を構築するから、明日には見ることができるだろう。

 蛮勇を諫めたのが効いたのかな?

 廃輸送船を前面に出して、その両翼に陸上艦を展開できる。

 中の広場から戦機と獣機が攻撃するなら、被害は少ないだろう。


「明日は指揮所に籠らねばならんな。艦隊の展開だから、リオは来なくても良いぞ。だが明後日に、艦隊の指揮官クラスを集めてブリーフィングを行ないたい。場所を貸してくれんか?」


「人数は?」

「参加した機動艦隊はいくつかの艦隊で構成されています。12艦隊ですから、副官を含めて36名、それに指揮所から数名……、総計で40名以上50名未満になりそうです」


「プライベート区画の会議室を使いましょう。やたらと大きいんですが、人数が多いですから円卓にはなりませんよ」

「それなら、指揮官だけを円卓に出来ぬか? 我等を入れて20名にはならぬ。副官は円卓後部にテーブルを並べれば十分だ。会場作りは指揮所から人を出そう。リオ殿達に迷惑はかけぬぞ」


 軍の上級士官達だからな。あまりみすぼらしい場所だと、フェダーン様の立場も考えないといけないだろう。


「リオ殿とエミー、それにドミニク殿は出席してもらうぞ」


 やはり……。できれば勝手に進めて欲しかった。


「俺達は軍人ではありませんが?」

「陛下より、顧問の勅命を受けておるではないか。軍を指揮する必要はないが、状況に応じたアドバイスを頼みにしているぞ。それにヴィオラ騎士団は4艦を持っておるのだ。艦隊指揮官とドミニクは同じ立場とも言える。エミーはリバイアサンの指揮官。今回のレッド・カーペットの要でもある」


 さすがは王国の御妃様だ。俺では簡単に論破されてしまう。

 ウエリントン王国は、絶対お妃様達で運営されているに違いない。とはいえ、国王陛下もいろいろと忙しそうなんだけど、どんな仕事をしてるか想像もできないな。


「リバイアサンの持ち主という立場もあるし、戦姫を自在に操る騎士と言う肩書も有効ね。男爵という立場は余り出さなくても良いわよ。リオ君以上の上級貴族がたくさんいるはずだから」


 部門の家柄ってことなんだろうか?

 そんな連中からしたら、俺なんて存在は有象無象の1人なんだろうな。

 だけど、普段から男爵という肩書は余り出したことがない。リバイアサンの所有者で戦姫の騎士と言うことで良いだろう。

                 ・

                 ・

                 ・

 翌日の朝。

 騎士団の集結地である第2陣を越えた。

 離着陸台から眺めると、北東方向に向けていくつもの楔型に並んだ陸上艦が見える。

先端の廃棄輸送船が横になっているから、正確には台形と言うべきだろう。

 近くの陣を見ると、輸送船の帆餓死側面を板で補強している最中だった。

 甲板にはロケット弾の簡易発射機が数個並んでいる。側面の前装砲は前方に向かって半分ほど突き出しているから、すでに葡萄弾を装填しているに違いない。

 陣の中には、戦機が数機待機していた。まだまだ始まらないんだが、すでに臨戦態勢が出来ているということなんだろう。


 第2陣を過ぎて1時間半ほど経ったところで、リバイアサンが停止した。着底の衝撃がデッキにまで伝わってくる。


「やっと到着したわ。だいぶ廃船を曳いてきたみたいだから、リバイアサンの西の角に廃船を移動するところから始めるはずよ」

「移動ですか? 結構厄介に思えますね」

「戦機輸送艦が使えるわ。4隻あるから南北で2隻ずつ運用するはずよ」


 手伝えることもなさそうだから、とりあえずはここで待機していよう。

 制御室の方は、通信管制部門とドック管制部門が忙しくなるんだろうな。

 

 仮想スクリーンを展開して、監視所からの映像を見守ることにした。

 リバイアサンを起点にして整列することになるから、廃船の位置はかなり重要になるんじゃないかな?

 リバイアサンのドックが開かれ、ヴィオラ騎士団の2機の戦機輸送艦も手伝いに向かうようだ。

 獣機も2個小隊規模程が輸送艦から下りてきている。

 あの獣機達が、兵站基地の防衛を担うのかな?

 だけど、最初の任務は皆で廃船の船尾を押して位置を手直ししているようだ。

 大きな廃船だけど、30体ほどの獣機が取り付くと、それなりに動くんだな。


「船の形をしているだけよ。中身は食糧と飲料水のタルぐらいじゃないかしら」

 

 1時間程で、どうにか予定の位置に左右の先端に、2隻の廃船がそれぞれ据え置かれたようだ。

 その廃船の後ろに船首を衝突させたかと思わせるほどギリギリに軽巡洋艦が停船する。

 北側には、ずらりと停船を待つ艦船が控えているな。どれだけ近付けるかは、2隻の接近位置に巡洋艦が付いて接近する艦船に指示を出しているようだな。

 自力で動けるから、それほど時間を要せずに、次々と並んでいく。

 並んでいく速度はそれほど早くない。

 1時間に数隻と言う感じだから、最後の軍艦が並ぶのは明日の朝になってしまいそうだ。


「あれは、何をしてるんでしょうか?」

「あの獣機達ね。駆動輪を埋めているのよ。駆動輪を破壊されたら帰れなくなってしまうでしょう」


 ヴィオラの方も、舷側の扉が開いて獣機部隊が出てきた。

 ガリナムの方も、位置決めが終わり次第獣機を出すのだろう。後方をメイデンさんが哨戒しているから、魔獣の心配はなさそうだ。

 もっとも、上空で監視している飛行機や、リバイアサンの監視所で30km以内に接近すれば直ぐに分かるだろう。


 リバイアサンの左後方にヴィオラとガリナムが並び、右手にはエルトニア王国の軽巡洋艦2隻が並んだ。

 西の開口部は南北800mほどあるが、ガリナムがその外側を遊弋してくれるから、中は外に比べれば格段に安全だろう。

 そんな広場の陸上艦に沿って獣機が塹壕を掘っている。掘り出した土砂で駆動輪を覆うのは軍船と同じだな。


 北東に10隻ほど軍船が並んだところで、フェダーン様は指揮所に戻っていった。

 軍艦の陣の状況と課題が無いことを確認したいのだろう。

 今夜から、指揮所は眠らずに辞退を見守ることになるに違いない。


 プライベート区画での夕食には、フェダーン様も現れた。

 特に困った様子が無いようだから、順調に陣地が作られているに違いない。


「今のところは順調だ。落ち着くまでには2日程掛かるかもしれぬが、孵化が始まったとの連絡は届いておらぬ。1時間程前の導師からの通信では、平和な景色と追伸があったぞ」


 とりあえずは、準備ができたということかな?

 孵化が始まっても、ここまで到着するには3日程掛かるらしい。

 陣構えが出来たところで、1、2度試射が出来そうだな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ