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M-159 騎士団長はストレス気味


 昼食を終えたところで、軍の貨客船に乗船する。

 今回は4隻になったようだ。一緒に巡洋艦が同行するのは、フェダーン様が乗船しているからに違いない。

 駆逐艦2隻が先行し、貨客船の両サイドも駆逐艦が並走している。最後尾には巡洋艦だから、海賊も手を出すことは無いだろう。

 強いて言えば、魔獣が心配になるけど、風の海の中間地帯にまでやってくる魔獣は危険な奴は少ないし、駆逐艦の砲撃で容易に追い払うことができるだろう。


 貨客船の甲板に設けられた休憩所で、のんびり周囲を眺めながらアレク達とグラスを傾ける。

 フレイヤ達はテーブルを2つ寄せ合って、わいわい騒ぎながらお茶を楽しんでいるようだ。


「リバイアサンに行けば新型銃を見せて貰えるんだな?」

「新型飛行機への搭載を優先しているようですけど、獣機や戦機もありますからね。ある程度の数を作ってあるはずです」


「例のロケットは俺達に関わらないようだが、白兵戦だってあり得るはずだ。戦鬼用の長剣をまだ持っていなかったな」

「アリス用に鉄の棒を受け取りました。少しでも長い方が有利でしょうし、数を相手にするとなると、長剣の切れ味も落ちてしまいそうです」


「考えましたね。俺も、用意してもらいましょう。戦機用に数本まとめて頼んでおきます」


 アレクはちょっと考えているようだ。

 悪くはないと思って入るんだろうけど、戦鬼は戦機よりも大きいからなぁ。

 少し援助してあげようかな。

 槍ではなくハルバート辺りなら、格好も付くんじゃないかな?

 ローザも欲しがるだろうか? いくつかカテリナさんに頼んでみよう。


 客室は3段ベッドだった。フレイヤを一番下にすれば寝相が悪くてもだいじょうぶだろう。1部屋6人だから、かなり窮屈だけど。貨客船だからねぇ。

 翌日の昼近くに、リバイアサンを見てほっとしてしまうのは、やはり客室が窮屈だったからに違いない。


 リバイアサンのドックを開けて、貨客船ごと中に入る。

 荷物も結構あるみたいだな。荷役用の獣機が動き出し、ガントリークレーンがフックを甲板に下ろしている。


「とりあえず、プライベート区画に行きましょう。ゆっくり手足を伸ばしたいわ」


 そんなフレイヤの言葉に、皆が頷いている。

 ぞろぞろとお上りさんよろしく、通路を歩いてエレベーターを乗り換えた。


 やっと着くと、フライヤ達は荷物を置くとジャグジーに向かった。

 俺はのんびりと一人で入ろう。

 ソファーに腰を下ろすと、マイネさんがコーヒーを運んでくれた。


「やっぱりここが一番にゃ。次は隠匿空間のログハウスが良いにゃ」

「広々としてますからね。マイネさん達は休暇はどこで過ごしてたんですか?」

「実家に帰ってたにゃ。まだ小さい兄弟がいるから大変にゃ」


 子だくさんの家庭のようだ。

 でも嬉しそうに話してくれたところをみると、皆仲良しなんだろうね。


 さて、カテリナさんの作った工程表を眺めてみるか。

 仮装スクリーンを展開すると、エルトニア王国軍の準備が始まっているようだ。

 コリント同盟の西にあるマルトーン王国との国境線から北に100ケム(150km)ほどの場所から、北北西に2つの機動艦隊を並べるらしい。

 王都防衛に1個艦隊を残しているし、並べた機動艦隊をすり抜けるスコーピオを狩るために足の速い小さな艦隊を2つ作るようだ。

 王都から50ケム(75km)付近にはエルトニア王国に席を持った騎士団が並ぶのだろう。

 それはレッドカーペットの1か月程前らしいから、今は魔獣狩りを続けているに違いない。


 工程表を見る限り、俺達に直接かかわるのは半年ほど先になりそうだな。

 その間は魔獣狩りで過ごせば良さそうだ。

 

 タバコに火を点けて温くなったコーヒーを飲んでいると、フレイヤ達がやってきた。

 風呂上がりだから、輝いて見える。


「あら、これを見てたの? まだまだ余裕があるのよねぇ。ナルビクから預かった士官候補生達も使えるようになってきたわよ」

「3人1組で左右12基の連装砲塔を任せることになる。同士討ちは避けたいから、左右の回転角と仰角に制限を掛けたよ」


「回転角は時計回りに75度。仰角は50度までだったわね。それ以上に動かすとロックされると言ってたけど、照準器にも表示が出るみたいよ」


 残った28人の内、12人にはドックの入り口にある銃座についてもらい、16人は砲弾運搬用の自走車を動かして貰うことになっている。

 新型飛行機の爆装は、ベルッド爺さん達に担当して貰うことになりそうだな。弟さんもいることだから戦機の整備も含めて分担して貰えば良いだろう。


「ドミニク達も配置には苦労するだろうな。リバイアサンの斜め後方に展開するんだから」

「銃座を増設すると言ってたけど、普段は使わないでしょうし……」


 装甲板で囲んだ銃座ということかな?

 確かに魔獣狩りでは必要なさそうだ。それに2回目の脱皮を終えたスコーピオを倒せるかどうかかなり微妙だからね。

 とはいえ、10日間の安全を少しでも高くするには必要な措置でもある。

 鉄板で囲っただけの簡単な銃座でも、安心して銃を撃てるに違いない。


 俺も、風呂に入ってくるか!

 端末を仕舞うと、フレイヤに手を振って自室に向かう。

 誰もいないから、大きな風呂に行ったのかな? まあ、この部屋の風呂も大きいんだけどね。

 

 のんびりと浸かっていると、カテリナさんが飛び込んできた。

 どこにいたんだろう? 俺に抱き着いてきたけど、それよりもカテリナさんの出現にちょっと驚いてしまった。


「今日は余りのんびりしてられないのよね。フェダーン達が指揮所を作るらしいから、そのお手伝いがあるの」

「例の話ですね。通信機はアリスが提供したようですが、上手く複製できたんですか?」


「かなり面倒だったと、ガネーシャが言ってたわ。部品を複製して組み立てはガネーシャ達だから、どうにか艦隊の指揮艦に配布できたというところかしら。

 これから、他の王国との通信網を作らないといけないと嘆いてるわよ」


 西の戦の状況をある程度知ることが出来そうだな。

 場合によっては、緊急介入も視野に入れねばなるまい。


 カテリナさんは俺にキスをすると、直ぐに出て行ってしまった。

 まるでカラスの行水なんだけど、女性がそれで良いのかと考えてしまう。

 もう少し、手足を伸ばしていよう。ここはのんびりできるな。

                ・

                ・

                ・

 夕食の席に、本来いるはずの2人が見えない。

 まだカテリナさん達は指揮所作りに励んでいるようだ。


「先に食べてしまいましょう。マイネさん、運んで頂戴」


 ドミニクの無慈悲な宣告で、俺達は夕食を取る。

 休暇を終えたばかりだから、食糧庫にたっぷりと生鮮食品が入っているようだ。航海時よりも少し贅沢な食事を味わいワインを飲む。


「出発は明日の昼頃になりそうよ。まだまだ荷物が運ばれているわ」

「搭載能力は輸送艦数十隻以上ですからね。運べる撃つに運んでおくつもりなのかもしれません。それに、現在の運び先は軍に提供した倉庫だけのようです」


「まだまだ入るってこと?」

「ドックの倉庫だけで6カ所もあるんだ。その上、居住区画にだって商会ギルドの倉庫もあるし、ヴィオラ艦隊の食料倉庫だってある。

 さらに会議室や、レクレーション用の大きな部屋にだって荷物は置けるはずだ」


 さすがに砲弾や爆弾はずっと後になるんじゃないかな。

 とりあえずは食糧や交換部品類を運んでいるに違いない。


「明日は、会議をしたいわ。リバイアサンと3艦の位置関係、戦機と獣機や自走車も考えないと……」

「その上に、戦機の輸送艦と護衛艦もあるんだよなぁ。かなり込み合いそうだし、それらの指揮をどうするかも考えないといけないってことか」


 ドミニクの心配も少し理解できる。かなり賑わいそうだ。同士討ちを避けながらスコーピオを潰さないといけないし、補給は24時間体制で行う必要もあるだろう。


「兄さんには知らせておくけど、下の会議室で良いんでしょう? できれば、この拠点を離れてからが良いんやないかしら」

「もちろんそのつもりよ。エミーやロベルだって来て欲しいし、母さんとベルッドにも声を掛けておくわ」


 フェダーン様にも出て貰った方が良いのかもしれないな。

 たぶん、話をすれば来てくれるだろう。騎士団内のことではあるんだけど、補給や応援に来てくれる獣機にも関係するから他人事にはならないはずだ。


「明日の正午には出発できそうだから、3時間後の1500時で良いかしら? 一度の会議で終わるとは思えないけど、先ずは状況の整理と課題の有無を確認したいわ」


 ドミニクの言葉に、皆が頷いている。

 ローザが目を輝かせているけど、きっと地味な仕事だと思うんだよなぁ。

 とはいえ、戦機以上の機動が行えるんだから、獣機をしっかりと守って欲しいところだ。


 デッキに出て一服をしながら荷物の搬入作業を見守る。

 すでに貨客船はドックを後にしたようだ。拠点の倉庫から、自走車が荷台を曳いてドックに向かう列が出来ている。

 まだまだ搬入作業の終わりが見えないな。


 ベッドに入った時には、フレイヤとエミーがいたはずなんだけど、翌日目が覚めた時にはクリスを抱いていたし、背中にはカテリナさんがしっかりと肌を寄せていた。

 全く気が付かなかったけど、俺の動きで目を覚ました2人が笑みを浮かべて、抱き着いてきたんだよなぁ。

 そのままジャグジーに向かったけど、フレイヤ達はベッドの隅で熟睡しているようだ。

 遊び疲れというわけではなさそうだけど、ゆっくり寝かせてあげよう。


「午後に会議があると聞いたわ。ドミニクもかなり悩んでいるみたいね」

「騎士団が軍の戦列に加わることは初めてのようです。やはり団員の命を預かる身ですから、ストレスはかなりあるんでしょうね」


「あの子は真面目だから……。リオ君が上手くリードしてあげてね」

「レイドラもいるんでしょう? 昔からずっと2人で行動してたもの」


 レイドラの神託はどうなってるんだろう?

 未来を見れるのか、それとも龍神族の集合意識を垣間見ることができるのか……。

 不思議な女性だけど、ドミニクの良い友人であることは確かだ。

 だけど昨夜のドミニクの話では、2人で考えてもらちが明かないってことなんだろうな。



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