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M-156 公爵の別荘で待っていた者達


 海で一泳ぎをしたところで、部屋に戻るとシャワーを浴びる。

 これから隣の公爵の別荘を訪問することになるけど、休暇中ということでTシャツに短パン姿で行くことにした。

 王都ではこのような服装では貴族達の顰蹙を買うことは間違いないだろうが、休暇中であるし小隊に応じるわけだから問題はないらしい。


 メイクを終えた2人は俺にはもったいないような美人だ。

 このまま海辺でテニスに似たスポーツをするような格好だけど、やはり美人は何を着ても似合うんだよなぁ。


「だいぶ日が傾いてきたから、帽子はいらないわね。武装は拳銃だけだけど、十分でしょう?」

「敵対してるなら、ローザ達がお邪魔することは無いと思うな。帰りは真っ暗だから、一応準備しておけば安心できる」


 岬には別荘しかないからね。それなりに治安は良いんだが、万が一も考えられる。用心だけはしておいた方が良さそうだ。


「出掛けるのか? 期待してるぞ!」


 1階に上がってきた俺達をソファーに座ったアレクがグラスを掲げて見送ってくれた。前回はマクシミリアン・ワインを貰ったんだよな。今回はどうかな?

 でも美味しかったのは確かだ。1本ぐらいは貰えるかもしれないから、俺も期待していよう。


「頂けると良いですね。それでは出掛けてきます」


 3人で、別荘前の道を北に向かって歩く。

 崖を切り開いたような道だから、眺めは最高だ。

 たまに立ち止まって見入ってしまうんだけど、これが夕暮れだったらねぇ……。


「兄さんの別荘からの眺めも素晴らしいけど、この辺りも良いんじゃない?」

「でも、道の下は断崖ですよ。別荘を建てたくてもこれでは……」

「別荘は、隠匿空間のログハウスで丁度良いよ。海に行きたい時には、アレクの別荘もあるし、沖の島のホテルで利用できるんだからね」


 贅沢な暮らしは切りが無い。自分に合った暮らしをするべきだろうな。

 俺の場合はリバイアサンのプライベート区画だけでも過ぎたものだと思ってしまう。本来なら、とんでもない維持費がかかるんじゃないかな。


 マクシミリアン公爵の別荘は、道から奥まった場所にある。

 入り口近くに自走車が何台か停まっているのは、俺以外にも来客があるということなんだろう。


 玄関に着いたところで、ドアノッカーを叩く。

 扉を開けてくれたのは、前回の訪問時にあった初老の執事さんだった。


「招待を受けてやってきたのですが」

「リオ殿でございますね。どうぞ中にお入りください。公爵様がお待ちです」


 ん? 前回と俺とケーニアスさんの呼称が代わってるな。

 俺が男爵を拝命したから閣下になったのだろう。ケーニアスさんは先代が隠居したということかな?


 執事の後ろを歩いて行くと、立派な扉の前に出た。

 俺達に、少し待ってもらえるよう頭を下げると、ドアをノックして開いた。


「リオ男爵閣下と奥方お二方がお越しになられました」

「やって来られたか!」


 そんな声が聞こえてきたところで、執事が俺達に入ってくださいと言葉を掛けてくる。

 大きなリビングに入ると、ケーニアスさんが俺達のところに歩いてくるところだった。


「ようこそいらっしゃいました。奥様達のお姿を他の貴族に先駆けて拝見できたことを喜んでおります。さあ、どうぞこちらに!」


 俺達と嬉しそうに握手を交わして、テーブルに案内してくれた。

 先客がいるけど、問題ないのかな?

 軍の制服を着た人物が2人に、騎士団の制服に見える人物が4人だ。

 円卓を使っているから、この席では身分を気にせずにということになるんだろう。


「立派になられましたな。王女様も今では見違えるほどですぞ」

「いつの間にか、称号を持ってしまいました。とはいえ、今でもヴィオラ騎士団の騎士として勤めております」


 俺の言葉に、うんうんと頷いている。


「ローザ様の願いを聞くことで、リオ殿と会うことができるとは思いませんでした。招待に応じて頂き感謝しております。

 リオ殿が私の別荘に来ると聞いて、私に是非にと言ってきた者達ですから、ご安心ください。左から、第一機動艦隊のグレイム大佐とその副官。ブリアント騎士団のリストナ嬢とその副官、最後はヴァルゴ騎士団のオルアン殿とその副官です」


 紹介に合わせて、互いに騎士の礼を取る。フレイヤ達は頭を下げているからそれで良いのだろう。


「御招待にあずかりましたリオです。男爵位を持っていますが、それは後から付いてきたもの、今でもヴィオラ騎士団の騎士として砂の海で魔獣狩りをしております。今回は妻2人を同行してまいりました。ヴィオラ騎士団の旗艦であるリバイアサンの火器を統括するフレイヤ、同じく艦長のエメラルダです」


 紹介が終わると、ワインが出てくる。

 ケーニアスさんが掲げたグラスに合わせて乾杯を唱える。

 さて、どんな話題になるんだろう?


「先ずは私からで良いですかな? ハーネスト同盟軍との戦は避けられない状況かです。フェダーン様が東のレッド・カーペットの対応に出向くのを知って、動き始めたようですな。

 そうなると、会戦は東に向かう艦隊が動いた後ということになるのでしょうが……、

残された2個艦隊でハーネスト同盟軍を迎え撃つのはかなり危ない橋になりそうに思えてなりません」


 やはり王宮での会議はシャンシャンが目的だったか。基本合意は取り付けたものの、各艦隊の指揮官は与えられた資源での作戦を立案することになるんだろう。

 だけど、大きな勘違いをしているようだ。


「ブラウ同盟艦隊は東に向かわずにハーネスト同盟軍に当たるようです。これはフェダーン様本人からの情報です。残された艦隊から半個艦隊を引き抜いて東へ向かうそうです。

 2個艦隊ではなく3個艦隊であると認識してください。

 前回と同じく、ブラウ同盟軍は風の海と砂の海の境界付近で西を睨むと思われます。残った2個艦隊は低緯度地方で西に備えることになりますが、ここで従来の戦と大きく異なる戦になることをあらかじめ知っておいた方が良いでしょう」


 端末を取り出して壁に画像を映し出す。

 やはり映像を見ながらの方が相手も理解しやすいに違いない。

 前回の戦をダイジェストで見せたところで、敵の航空母艦を拡大して表示した。

 ブラウ同盟軍よりも5割程度性能が向上した飛行機の投入で、危うく大敗を喫するところだったのだが、ケーニアスさんには理解できただろうか?


「リオ殿がその場にいたから、どうにかなったということですか?」

「かなりきわどい戦でした。結果的には大勝したように見えますが、薄氷を踏む思いでしたよ。そのことがあった為、フェダーン様の依頼でカテリナさんが現状に2倍の性能を誇る飛行機を作っています。

 敵はウエリントン王国軍に軽巡洋艦の砲弾を落とせますが、、こちらは巡洋艦並みの砲弾を落とせます。速度は我等の方が速く、更に飛行機を飛行機で攻撃できる銃を装備させました。十分に互角以上の戦が出来ますよ」


「とはいえ、数は脅威ではないでしょうか? 場合によっては我等の2倍の戦力で攻撃してくると考えています」

「その時は、もう1つの作戦が行われます。敵の軍艦がウエリントン王国に足を踏み入れた時、敵に侵攻の意思があるものと判断することができるでしょう。

 その時、ガルトス王国の王宮の破壊が行われます。

 素直に引いてくれぬなら攻撃を継続し、更に西のウエルバン王国の王宮をも攻撃します」


 俺たち3人以外の連中が、驚愕の表情で俺に視線を向けた。

 できるならやりたくはないけど、フェダーン様はやる気でいるんだよなぁ。


「可能なのか?」

「飛行船を使います。時速100ケム(150km)以上で700スタム(約1000m)以上の高度を24時間程度飛行できます。重巡の砲弾12発分の爆弾を抱えてです」


 ある意味秘密兵器とも言えるだろうし、設計図を盗まれても敵には完成させることはできないだろう。ヘリウムガスはリバイアサンでのみ生産ができる代物だ。おかげで大量に作れないのが悩ましいところだけど、兵器の開発スパイラルを遅らせる分には都合が良い。


「何隻か用意できるのでしょうか?」

「1隻だけです。その代わり飛行機を量産しようとしているようです。飛行船はレッド・カーペットに使うつもりなのでしょう」


「お話を伺って少し安心できました。再度フェダーン様を訪ねましょう。『西は任せたぞ!』と言われてからずっと悩んでいましたから」


 そんなところがあるんだよなぁ。

 ちゃんと説明してあげないと分からないと思うんだけどね。


「次は我々ですね。その前に男爵就任おめでとうございます。かつての騎士団にも男爵任命の例はありましたが、ここ100年ほどはそのような事例がありませんでした。

 我等の質問は、布陣についてです。過去の例からも我等騎士団は軍の後ろに位置しています。スコーピオは魔獣ですから我等も第一線に布陣したく考えているのです」


 あの場で、それは終わったと思っていたんだけどなぁ……。

 2つの騎士団ともに、かなり意気込んでいるんだよね。その誠意は認めるんだけど、相手が悪すぎる。


「その意気は認めますが、実は軍の方もかなり悩んでいるんです……」


 従来のスコーピオとの戦い方と今回の大きな相違は3つあるのかな?

 1つ目はリバイアサンの存在だ。少なくとも巡洋艦十数隻の砲撃能力がある。

 2つ目は飛行船の投入だ。安全に孵化地点近くまで飛んで行って、爆撃を行える。

 3つ目がロケット弾の使用になる。大量に使用することで、広域の殲滅が可能になる。


 だが、それでも全てを阻止できない。

 軍艦同士の隙間を抜けて第2陣に向かうスコーピオの数はかなり多いはずだ。

 フェダーン様は2割も削減できれば上出来だと言っていたぐらいだ。

 アリスのシミュレーションでも損害を3割以上にすることは難しいらしい。


「少しは減るでしょうが、押し寄せるスコーピオの数は膨大です。中小騎士団の士気を保ちつつ、第2線でのスコーピオ削減を図らねば、被害はエルトニア、ナルビク王国の広範囲にも及ぶでしょうし、先ほどの話で分かる通りスコーピオ戦に向かう軍艦の数も足りないんです」


 横一列とはいかないかもしれないな。

 いくつかの楔形陣を作って、赤い津波を少しでも弱める戦をするんじゃないだろうか。

 その後ろには、資材を輸送してくれる騎士団だっているんだからね。


「軍の規模が前回よりも少ないと……」

「それに見合うべく兵器を開発しているんですが、どれだけ数を揃えられるかというところです。一部の兵器は、スコーピオ戦に限って騎士団にも供与する考えですから、取扱説明を別に行う予定です」


 簡易ロケット弾発射機とロケット弾を数十発を預ければそれなりに効果もあるはずだ。

 2つの陣の距離が離れているから、少しぐらい狙いが外れても問題はない。

 ロケット弾は騎士団にたくさん渡しておいた方が良いのかもしれないな。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 貴族の招待が小隊になってます [一言] ここまで読ませていただきましたが、 面白い世界観が誤字脱字で台無しになっててすごくもったいないです。
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