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M-153 新型爆弾


「軍の砲弾は炸裂弾を放つんだろうが。騎士団の大砲はどちらかと言うと徹甲弾のようなものだ。騎士団用の炸裂弾は軍が用意しているのか?」

「騎士団の多くが統一された大砲を備えているので助かる。榴弾を用意しているぞ。後装式や魔撃槍なら問題はないのだが、舷側砲の多くが前装式だ。丸い弾丸ではないから面倒だが、信管は爆発で5秒後に炸裂する火薬式だ。もっとも、舷側砲は葡萄弾を多用すると思っている」


 口径6.5セム(約100mm)を越えないということで、騎士団の舷側砲は口径5セム(75mm)が一般的だ。

 参加する騎士団の中には異なる口径の大砲を装備しているものもあるのだろうが、8割方はこれで問題ないとフェダーン様が説明してくれた。


「他の口径については、騎士団と別途調整することになるだろう。中には6セム(90mm)の砲を搭載している騎士団もいるようだが、彼等は自分達で砲弾の調達ぐらいはできるはずだ」


 複製ということになるのだろう。

 ヴィオラ騎士団の弾丸もそんな風に複製していたんだろうか?

 てっきり、工房で作っていると思っていたんだけどなぁ……。


「戦機や獣機の稼働時間に問題は無いんですか?」

「通常なら陸上艦のカーゴ区域で魔気を充填することになるんだけど、今回は難しいでしょうね。戦機の輸送艇に魔気のカートリッジを積んでおくから、輸送艇で交換することになるわ。小さいけれど休憩所もあるからコーヒーぐらいは飲めるわよ」


 レイドラの問いに、待っていたような口調でカテリナさんが話してくれた。

 それだけ補給を考えていたということなんだろう。

 軽い飲み物を飲むだけで、ストレスも減るんじゃないかな。


「でも、戦機輸送艇は、他の艦船への荷役も行うんでしょう?」

「状況次第でしょうけど、ヴィオラ騎士団の戦機輸送艇2隻は、リバイアサンの後方で戦機と獣機のバックアップをする予定よ」


「他の艦船については廃棄寸前の輸送艦をこれに当てる。方舷だけ装甲を強化しておけば、トーチカ代わりにも使用できよう。リバイアサンの北に機動艦隊を並べるのでその後方に『ハ』の字を描くように船首を合わせる予定だ」


 実際の艦列を見ないと何とも言えないな。

 横腹を見せるようにも思えるけど、後方の安全をどれだけ保てるかがかなり難しそうだ。

 軍艦の間が10m以上空くと言っていたから、かなりの数がすり抜けるに違いない。

 戦機部隊や獣機部隊がそれを狙撃することになるんだろうけど、焼け石に水のような気もするな。

 資材搬入のための側面扉を防衛するのが精々なんじゃないか?

 それすら、困難に思えてならない。


「おおよそ、このような戦いになる。協力してくれる騎士団には出発時に弾薬と食料を積み込むことになるのだが、リバイアサンの場合は、半年後から搭載を始める。出発は、孵化予定の1か月前だ」


 準備できる時間は11か月ということか……。

 どんな戦になるか予想もつかないけど、リバイアサンは大砲を前に撃てば良いはずだ。連続砲撃は少し間延びしてしまうが、時間当たり30発は行けるんじゃないかな。

                 ・

                 ・

                 ・

 エミー達がリバイアサンの士官に、レッド・カーペットとの戦に参加することを正式に伝え、その配置も合わせて伝えたようだ。

 一時騒然としていたけど、この頃は落ち着きを取り戻してくれた。

 火器部門の連中は、砲撃訓練を何度か行っているようだし、ナルビクからやってきた士官候補生達の訓練にも色々と手伝っているようだ。

 正面の砲塔群はリバイアサンの連中に任せるとしても、左右の砲塔群は士官候補生に任せられそうだな。

 リバイアサンの後方は、配置してくれる駆逐艦とメイデンさんの戦闘艦に任せられるだろう。

 ヴィオラとガリナムの戦機と獣機もいるし、新型銃を搭載した試作自走車はイヌ族の偵察部隊の連中が、目を輝かせて見ていたからね。

 

「ヴィオラ騎士団にはロケット砲部隊を設けないのね?」

「リバイアサンの後方で、補給に従事することになるでしょうから使う機会はあまりないでしょう。簡易発射装置を使った最初の攻撃には参加できるとは思うんですけど」


「それで十分だ。ロケット砲を搭載した試作駆逐艦の試験を行ったようだが、西にも欲しいと言っておったぞ。それだけの攻撃力があると上層部も考えを改めたようだな」

「用兵的には難しい戦術を組ことになりますよ。攻撃力はありますが、飛距離が短いですし、次発装填に時間が掛かります」


「それを知って陛下に具申するなら良いのだがな。一応、リオ殿の言う欠点は陛下に話してあるぞ」


 それなら俺達には関わらないことだ。

 使えるロケット弾が減るんじゃないかと心配していたら、フェダーン様に笑いとばされてしまった。

 簡易な構造だから、3次複製が可能らしい。

 軍内部にも、複写の魔法を使えるものがいるようだから、会戦前にかなりの数のロケット弾を準備するぐらいはできるんだろう。


「駒が多いと、それを組み合わせられる指揮官が必要だ。生憎とそのような指揮官がおらぬから、古い考えを持たぬ高級仕官数人で作戦立案をせねばならぬだろうな。全く、困った時には、更に困った事態が起きるものだ」


 最後は愚痴めいた話になっている。

 フェダーン様がリバイアサンに乗船しているのも、軍内部にいるとストレスが溜まるからかもしれないな。

 もっとも俺の方はストレスが溜まりそうなんだけどねぇ。


 カテリナさんは、第三者的な存在に満足してるんだけど、結構意見を通すんだよね。

 とりあえず兵器製作の方は、ガネーシャとベルッド爺さん達に任せているようだ。

 ナパーム弾の図面を上げたんだけど、あれはどうなったのかな?


「フェダーン。おもしろい爆弾が出来たから、一緒に見て見ない?」

「炸裂するのが爆弾だろうが? おもしろいという意味が分からんな」

「ほら、発案者も一緒じゃないとダメでしょう」


 カテリナさんに手を引かれてソファーから腰を上げることになった。向かう先は最上階の監視所だ。

 何時も3人がここで周辺状況を監視しているのだが、暇な乗員がたまにやってくるらしい。

 眺めは一番だからねぇ。アレク達もやってきたんだが、酒が禁止だと聞いて直ぐに帰ってしまったんだよなぁ。


「初めて上ったが、さすがに眺めが良いな。あれが測距離盤か、かなりの大きさだ」

「4面とも硬質ガラス張りよ。砲弾の直撃にどこまで耐えられるか疑問だけど、案外耐えられるかもしれないわ」


「最高の見通しだ。20ケム(30km)は見通せそうだ。ここにも監視員を置きたいが……」

「測距離儀の動きを妨げないなら、数人は配置できるでしょう。通信は魔石通信機を使うことで、指揮所と連絡が取れると思います」


「そろそろ始めるわよ。ちょっと待ってね!」


 カテリナさんが監視員のところに歩いて行くと、通信機を使ってどこかに連絡をしている。

 アレク達はヴィオラとガリナムに同行して仮に出掛けているから、離着陸台に飛行機を直ぐに出せるだろう。

 

 突然、俺達の直ぐ近くに飛行機が上昇してきた。

 腹の下に直径50cm、長さ1.5mほどの円筒形の爆弾を抱いている。

 通常の爆弾は後ろに羽が付いているけど、あれにはそんなものが付いていない。

 ちゃんと、爆発するんだろうか?


「1520時に新型爆弾の実験をするわ。リバイアサンの北、3ケム(4.5km)に投下します!」


 再び、大きな声で通信機に伝えている。相手は制御室に違いない。

 制御室からなら、各所に連絡を送れるだろう。でも、リバイアサンの中なら、爆弾の試験など気にならないんじゃないかな。


「10分後になるが、記録は取っておるのか?」

「もう1機飛行機が飛んでるし、ほらガネーシャ達もやってきたでしょう」


 俺達に気が付いたようで、軽く頭を下げたのは男女5人組だ。三脚の上に箱が乗っているけど、あれがこの世界の映像記録装置になるのかな?


「さて、私達も窓際に行きましょう。残り3分を切ってるわよ」


 時計を見ながら、その時を待つ。

 遠くに飛行機がゆっくりと飛んでいるのが見えるけど、あれでも時速200kmは出てるんだろうな。


「投下10秒前……、5秒……、投下!」


 カテリナさんのカウントダウンを聞きながら、投下したであろう地点を見守る。

 突然、紅蓮の炎が大地を包んだ。

 良かった。ちゃんと爆発したみたいだ。


「広域魔法でも、あの大きさの火炎を出すことはできぬぞ!」


 フェダーン様が興奮した口調で声を上げた。

 数秒後に炎が小さくなったけど、まだ燃えているな。あの辺りで爆発したに違いない。


「使えるかしら?」

「爆弾よりも使えそうだ。焼き殺すなら共食いも少しは防止できる」


「なら、量産を進めるけど、飛行船には搭載できないわよ。飛行機の爆弾懸架装置に合わせて作ったものだから」

「構わぬ。それでどれぐらい作れそうだ?」

「あの爆弾には重量軽減の魔方陣を描いているの。少し面倒だけど、数百は揃えられるんじゃないかしら」


 カテリナさんの言葉に、フェダーン様が考え込んでいる。

 使えるが、数は少ないということなのかな?

 とりあえず、監視所を後にしてプライベート区画に戻ることにした。


 マイネさんが運んでくれたコーヒーを飲みながら、新型爆弾であるナパーム弾に話が弾む。

 フェダーン様としては、気に入ったということになるんだろうな。


「出来れば千発欲しいところだ。あの円錐形の内側に書き込む魔方陣が製作の障害ということなのか?」

「それと材料ね。揮発性の高い油に粘性を持たせないといけないの。錬金術士が必要なのよ」


「魔方陣を書き写すだけなら、美術課の学生を動員できよう。錬金術士の数は多いとは言えないが、同盟の危機でもある動員は可能だと考えるが?」

「それなら千発は行けそうね」


 作るつもりのようだ。

 20機ぐらいで落とすなら50回は落とせそうだな。

 夜間にいくつか落として照明弾の代わりにも使えるかもしれない。

 この世界の夜間照明となると、あの樽型サーチライトだからねぇ。500m先がどうにか視認できるぐらいなんだよなぁ。


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