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M-118 リバイアサンの本格稼働に向けて


 王都に夕闇が迫る中、ヴィオラ艦隊は陸港を後にした。

 俺達の艦隊以外にも、1隻の巡洋艦と3隻の駆逐艦が補給船4隻を護衛して同行する。

 間直に迫った隠匿空間の開放を控えて、軍と商会も活発に動いているようだ。


 このまま街道を北上するが、3日目からは周辺の偵察を仰せつかってしまった。

 魔獣を避けるのが目的だが、小さな群れならガリナムと一緒になって狩れるようにとの親心だろう。

 前のガリナムよりは足が遅いけど、この艦隊の中では元軽巡洋艦のガリナムが一番だからね。

 少しの道草なら過ぎに追い付いてしまうだろう。


「やはり士官室は狭いわね。」

「昔から比べれば贅沢だと思うよ。最初はハンモックだったからね」


「あれも良い思い出よ」


 エミーに最初のヴィオラでの生活を話し始めた。

 狭かったけれど、楽しかった思い出が頭をよぎる。

 この士官室にはデッキが無いから、騎士御用達のデッキへと向かう。寝る前に一服を楽しもう。


 翌日は王都を出て3日目になる。朝食を済ませたところでアリスと共に周辺を偵察してドミニク達に報告する。


「街道だからでしょうね。思ったより魔獣が少ないわ。やはり渡河してからが問題になりそうね」


 ドミニクからは特に指示が無いから、何時ものデッキへと向かう。

 アレク達が酒盛りをしている横で、フレイヤ達はローザ達とお茶を飲んでいた。


「どうだった?」

「平和ですね。このまま北上しても、何も問題は無いでしょう。ドミニクは渡河してからが心配なようです」


「そんなところだろうな。風の海より砂の海だ。ここで暇をつぶすんだな」


 サンドラがワインの入ったカップを渡してくれた。

 少しずつ味わいながら一服を楽しむ。


 エミー達は小さな双眼鏡を手にして、フィールドウオッチングに余念がない。たまに小動物を見付けるとローザ達と一緒にはしゃいでいる。

 魔獣でなければ、楽しいのかもしれないな。俺も最初の頃はあちこち小動物を探していたから、サンドラ達にからかわれていたのを思い出した。


 王都を出て4日後に渡河を行い、隠匿空間に向かって北上する。

 リバイアサンを前方に見ることができるまでに2度の狩りを行い、クリスと魔石を17個ずつ分けることができた。

 何となく嬉しくなるな。中位魔石が7個もあったし上位魔石だって2個もあったぐらいだ。


「明日には到着ね。ロベル達も来るんでしょう?」

「隠匿空間から巡洋艦で来るそうだ。フェダーン様も一緒らしい。ローザ達も来たかったようだけど、まだ中が整わないからね」


 輸送船を騎士団専用のドックに入れて、巡洋艦は軍のドックに入れる。

 軍としても、早めに艦体の補修ができる体制を整えたいのだろう。騎士団の陸上艦も、整備対象としてくれるらしいから、もう1つのドックは利用頻度が高いかもしれないな。


 リバイアサンが見えた翌日。朝早くに周辺偵察を終えて、ヴィオラに状況を報告する。

 幸いなことにリバイアサンの周囲50kmに魔獣はいないようだ。

 リバイアサンの離着陸台を開放して乗り込むと、アリスを駐機場においてドックに向かう。

 アリスに自動制御でドックの開口を行ってもらい、作業台を外に出して状況を見守った。


「隠匿空間には連絡してるんだろうか?」

『巡洋艦から今朝早く打電したようです。通信内容からすると、隠匿空間からの出発は2時間後になると推測します』


 ドックに輸送船を入れる方が早いかもしれないな。

 まだ斜路が延びていないが、すでに装甲板は開いているようだ。


『ヴィオラから通信です。フレイヤ様達を乗船させたいようです』

「作業台の下にヴィオラを接近させるよう伝えてくれないか。手動で作業台を降下させる」


『了解。通信開始……。返信を確認。直ぐに向かうそうです』


 汎用の魔石通信機を1台置いておくことも考えないといけないな。補給を作業台で行うことだってあるかもしれない。

 ヴィオラがリバイアサンに横付けして停まったことを確認して、作業台を下降させタラップを伸ばすと、フレイヤ達が乗り込んでくる。

 カテリナさんも乗り込んできた。しばらく顔を見なかったけど何をしてたのか聞くのも怖いんだよね。

 いきなりハグしてくれたから、フレイヤ達がジト目で睨んでる。


 トラ族の団員がトランクや小箱を乗せたカートを次々と作業台に運んでくれた。


「ドックの斜路はまだみたいね」

「今伸ばしたらヴィオラとぶつかるよ。ドックへの受入れシーケンスを一時停止しているようだ」


 作業台が上昇すると、ヴィオラがリバイアサンから離れる。

 止まっていたシーケンスが動き出したのだろう。2本の斜路がゆっくりと伸びていくのが見えた。


 ヴィオラが1kmほど離れたところで、輸送船がリバイアサンに近付いてくる。

 2つのドックのどちらに入れば良いのか分かっているのだろうか?


『斜路の上部に緑色灯が点くようです。もう1つは赤色灯ですから、陸港の停泊桟橋の表示灯信号と同様です。問題は無いでしょう』


 そういうことか。ちょっと安心した。

 作業台が桟橋の端に到着すると、フレイヤ達を作業台からトランクを運びだす。その他にも荷物があるから、プライベート区画へ何度か往復することになるだろうな。

 マイネさん達も大きなバッグをカートに積み込んで持って来たようだ。


「こっちは任せといて。ドックの方はお願いね!」


 フレイヤ達がトランクを押してドックから出ていく。

 こっちは2隻を受け入れてからになりから、ゆっくりできるのは夕方近くになるんじゃないかな。


 作業台から一服を楽しみながら状況を眺める。

 北から巡洋艦が近付いてきた。輸送船も同行しているから、早めにドックを機能させたいのだろう。

 駐屯する軍人達は兵站任務が多いはずだ。食堂は兼用になるから商会の連中が喜びそうだな。


 輸送船がドックの中央付近に停泊した。

 本来なら移動式のタラップを操作することになるんだが、生憎と用意されていない。かつての艦船は艦船がタラップを用意していたのかもしれないな。

 

 輸送船のクレーンが小型の移動式タラップを運んできたようだ。

 マストのようなクレーンを使って桟橋に下ろしている。

 前にやって来た時には板を渡していたんだが、やはり危険は避けるべきだということになったのかな?

 2台の移動式タラップを下したところで、金属製のカゴに数人を乗せてきた。

 彼等が移動式タラップの操作を行うのだろう。

 カゴから下りると、直ぐに移動式タラップを輸送船へと伸ばしている。


 次々と輸送船から人が下りてくる。

 その傍らでは輸送船の上部甲板扉を開いてマスト形のクレーンが大きな木箱の荷下しを始めた。

 当座の生活物資ということなんだろうけど、かなりの量だな。


「こちらでしたか!」


 マーデスさんが俺を探していたようだ。

 笑みを浮かべて近付いてきた。

 互いに騎士の礼を取ったけど、俺の場合は何となくぎごちないんだよなぁ。


「バロン達も一緒です。先ずは荷物の整理ということになるのでしょうが、兵員居住区を教えて頂ければと思いまして」

「あの巡洋艦にロベル先任伍長と、かつての訓練生が乗ってるはずだ。彼等が色々と教えてくれると思う。だけどしばらく時間が掛かりそうだから、倉庫の中で待ってて貰うことになりそうだ」


「バロン達は早く食堂を確認したいと言ってましたが?」

「そっちは急ぐことになりそうだね。ところで昼食と夕食は?」


「昼食は戦闘食、ビスケットですな。夕食は弁当を持たされました」

 

 明日の朝ぐらいには食堂を機能させたいな。

 マーデスさんと一緒に近くの倉庫へと向かう。かなり大きいから、しばらく待機して貰うには丁度良い。


「やあ! やってきましたよ。私の方は、先行調査の2人を同行しました。先に移動したいのですが?」

「それなら問題なさそうですね。ところで魔石通信機はお持ちですか?」


「2台用意しました」

「汎用魔石通信機ならチャンネル00で、俺と連絡が取れます。マーデスさんもよろしいですね」


 先行調査の連中が同行してくれたのは助かるな。

 今度は人数が多いから、明日には簡単な食事は何とかなりそうだ。


「巡洋艦が入ってきました。もう直ぐ、こっちに来るはずですよ」

「直ぐには動かさぬと思いますが、これが動くんですからなぁ……」


 軍人の目で見ても常識はずれだということなんだろう。

 マーデスさんは、新たな乗員を倉庫へと移動している。輸送船の方は、まだまだ荷下ろしが続くみたいだな。


 もう1本楽しもうと作業台に向かうと、カテリナさんが近付いてきた。


「いよいよリバイアサンが本格稼働しそうね」

「前回だって、戦争に参加しましたよ」


「あれは、ハーネスト同盟への示威行為でしょう? 機動要塞の本領はそんなものじゃないわよ。巡洋艦も来たでしょう。フェダーンが乗り込んでるわよ」

「フェダーン様は軍の重鎮でしょう?」


「重鎮だから乗らざるを得ない、と言うところかしら。とりあえずフェダーンが乗っているなら他の干渉も無いでしょうから、騎士団としても都合が良いんじゃなくて?」


「なくて?」と言われてもなぁ……。

 制御室にはやって来るだろうから、席は用意し解くことになるだろう。エミーの後ろでじっとしていてくれれば良いんだけどね。


「プライベート区画の客室で良いんでしょうか?」

「それぐらいはしてあげるべきでしょうね。日中は上階への出入りも考えた方が良いわよ。さすがに夜はフェダーンも遠慮すると思うけど」


 騎士団の行動に干渉されなくとも、日常生活に干渉されそうだ。

 一番の問題児でもあるカテリナさんにも、自重して欲しいところだな。


 2つの桟橋を繋ぐ橋を渡って来る姿が見えた。

 30人程だな。

 ロベル達とフェダーン様にしては人数が多いんだが……。


「ガネーシャ達よ。最後尾の数人はマイネの部下というところかしら」

「王宮から?」

「人選はヒルダがしてたわよ。その内にローザが行くだろうからと言ってたわ」


 姉さんがいるからね。それにこっちの方が色々とおもしろそうなものがある、と思っているのかもしれない。

 だが……、待てよ、駐機場の戦機を地上にどうやって下すんだ?

 アリスは飛べるから問題はないが、駐機場でコクーン化されていた戦機は飛行能力を持たないはずだ。

 やはり、まだまだ分からないところが色々あるようだな。


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