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伝わらない!  作者: ねがえり太郎
再び、ミキ
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再び、月曜日

再び、ミキ視点に戻ります。



時計台で泣かれて絆された二週間後の月曜日、一緒に映画を観た後またしても盛り上がってしまった私達は、地下鉄大通駅の改札で長いこと立ち話をしてしまう。そして結局話題が尽きず話し足りなくて―――そのまま地下歩行空間に面したカフェに一旦腰を落ち着ける事になってしまった。


アレックスに告白されて、だけど友達関係を解消できなくて。気まずい気持ちがどうしても拭いきれなくて、だから映画だけ見てサラッと別れようと思っていたのに……うーん、話が合い過ぎるって言うのも困りものだなぁ。


既に夕飯を食べた後だから特にお腹は空いていない。分厚いパンケーキに目を奪われそうになったけれどもグッと堪えてソフトクリームを注文する。私はホワイト、アレックスはミックスを選択した。セルフサービスなのでその場で作って貰ってカップを受け取る。


「いただきまーす」


席に着いて早速スプーンで掬ってパクつく。うん?思っていたよりサッパリして食べやすいかな?ホワイトチョコ入りって書いてあったから、甘ったるいイメージだがあったんだけど。などと考えつつ二口目を口に運ぼうとして、アレックスがクスリと笑ったのに気が付いた。


「何?」

「いや……うん、楽しそうだなって」


クスクス笑うアレックスに向かって形だけムッとして見せると、慌てたアレックスが自分の分を差し出して来た。


「ミキさん、これも食べてみて!」

「ん、そう?じゃあ遠慮なく……」


ミックスも気になっていたんだよね。食い意地の張っている私は社交辞令かどうかも確認せず、アレックスのカップにスプーンを伸ばし一口味見させて貰う。


「うん、美味し」

「良かった」


ニマっと笑うと、アレックスも緑色の瞳を細めて笑った。

おお。見た目英国紳士のアレックスだから、笑うとますますイケメン度がアップする。う~ん、眼福だなぁ。


泣き落としで絆されて一緒にいる状態であるハズなのに、何だかこっちが良い目を見ている気がする。


アレックスは正直とてもカッコいいから見ていて嬉しくなっちゃうし、趣味が合うから一緒にいても楽しいし、いちいち楽しそうにニコニコしてくれるとこっちまで釣られて笑顔になってしまう。何だかんだ言って私もアレックスの事を気に入っているんだよな。微妙なバランスの付き合いだけど、やはり楽しい気持ちは抑えられない。




ああ、アレックスともうちょっと年が近ければなぁ。それかせめて社会人だったら。


はっ……いかんいかん。




都合の良い事を夢想する自分を叱咤する。私なんかを好きだと言ってくれるアレックスに対して、失礼な事を考えてしまった。これはあれだ、婚活サイトでマッチングした相手に対して、収入が足りないとか身長が希望より低いとか……いちいち細かい条件にイチャモンをつけているのと変わらないのでは……何様ですか?私って。


でもなぁ……やっぱ学生と社会人ってかなり違う。


遠距離恋愛の彼と疎遠になっちゃったのも、そう。距離が一番のハードルだったけど、何より社会人になって環境と心理状況が変わったと言う事の方が実はずっとずっと重い。仕事を始めるって、頭の中が引っ繰り返っちゃったりするくらいカルチャーショックの連続で……恋愛とか日常とか、仕事に慣れるまでは放り投げて棚上げしないとやって行けない。だから本当は年の差より、一旦その壁を通り抜けて来たかどうかって言う意識の違いの方が気に掛かる。


もし今のアレックスと付き合ったとして。


その後、社会人になっていっぱいいっぱいになったアレックスと上手く付き合いを続けて行けるかどうか分からないし、アレックスの方も新しい環境で新しい出会いがこれからたくさんあって―――やっぱ違うなって考え直す事もあるだろう。そしたらせっかく仲良くなっても、またお別れしなきゃならないかもしれない。




うん?




あれ?私―――何でもうアレックスと付き合った後の事、想像してるんだろう?


「―――で、ウチの父親がミニシアターの市民株主で。それで高校生の頃よく連れて来てくれたんだ。それで……そこでミキさんをよく見掛けて」

「え?私?」


一瞬グルグルする思考の波に捕われてしまって、唐突に自分が話題に上がってハッとする。ご指名されて自らを指差し確認する私に、アレックスはコクリと頷いた。


「その……その時からミキさんの事気になっていて。大学に進学した頃余裕なくてミニシアターに通って無かったんだ。暫くして久し振りにミニシアター行くようになってから、ミキさんを全く見かけなくなって、凄くガッカリしてたんだ」

「―――そうなの?」


何とアレックスによると、私達は英会話のレッスンが初対面では無かったのだと言う。全く周りに目を配っていなかったから、こんな綺麗な男の子が同じ映画館に出入りしている事すら気付かなかった。


「そう言えば、ここ一年くらいかな?ミニシアターにまたちゃんと通うようになったのって。大学生の頃はよく通っていたんだけど……仕事に就いた当初って、いっぱいいっぱいで趣味に掛ける時間も余裕もあまり無かったかも」


そして彼氏に掛ける時間も減って―――疎遠になった結果、振られちゃったんだけどね。と言うか私の方は『自然消滅かなぁ』なんてボンヤリ考えていたくらいだし。


なんつって、振られたら振られたでそれはそれでショックで。ちょっとだけヤサグレちゃったのだけど。


「そっかぁ……俺、ミキさんは就職して遠くの街で暮らしているのかも……なんて想像して寂しく思っていたんだ。だから教室にミキさんが入って来た時、すっごく驚いちゃって」

「……驚いてた?全然、全く平常心に見えたけど」


焦る私に対して目の前の英国紳士は余裕ありまくりだなぁ~と、自分の至らなさに歯がみをしてしまったくらいだ。


「まさか!必死で気持ちを落ち着かせてたよ。だけど確かに……ミキさんは挙動不審だったよね。見ていてハラハラしちゃったよ」


そう言いつつ面白そうにニヤつくから、今度は本気でムッとしてしまった。


「挙動……って、仕方ないでしょ!初めて顔を合わせる外国人……じゃなかったけど、言葉がちゃんと伝わらない相手だと思っていたから、思いっきり緊張しちゃってたんだもん。おまけに時間無くて自分の持って来た資料があんなんだって気が付かなかったし……」


するとアレックスがクスリと笑ってこう言った。


「ミキさんって本当に男同士……が好きだよね」


なんて蒸し返すから、思わず真っ赤になって反論する。




「―――それ、ホント誤解だからっ……!」




拳を握って羞恥に肩を震わす私を見て、アレックスは堪えきれない、と言うように声を出して笑い出した。



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