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次の約束




『次の月曜日【クールガイズ】観に行かない?』




と言うお誘いメッセージが早速届いた。お昼休みに食堂でランチを頬張りながら、ミニシアターのタイムテーブルを確認して予告動画を確認する。


酒浸りの私立探偵と揉め事を腕力で解決する示談屋、それから探偵の愛娘の三人が、失踪した司法庁長官の一人娘の捜索依頼を請け負う。そこに何故か腕利きの殺し屋四人が絡んで来て……


面白そう!陽気なアクション・エンターテイメントって好きなんだよね~、スカッとするし。




『行きたい!じゃあシネカフェで待ち合わせで良い?』

『OK!』




と返事が来た直後、追加メッセージが。




『……だけどホントにミキさんって、オジサン同士の絡み好きだよね(*^_^*)』




なっ……!




『アレックスが選んだんでしょう?!』

『ミキさん好きそうだなって思って。特にカップリング( ̄▽ ̄)』

『それ本気で誤解だから( ̄□ ̄;)!!』




怒りの顔文字を返しつつも気の置けない遣り取りが楽しくて、スマホの画面を眺めながらニンマリしていると。


「楽しそうだね」


と斜め横から声を掛けられた。


「サクちゃん」

「隣いい?」

「モチロン!」


松山さくらコト『サクちゃん』はコンちゃん同様、私の同期だ。見た目は綿菓子みたいに可愛らしいのだが、男性陣を魅了する笑顔を湛えながら毒舌を吐く、と言う特技を持っている。ホント、初めて聞いた時は耳を疑ったよ。二重音声かと思ったモン。


「この間ゴメンね!上司があり得ないミスしやがってね?尻拭いに時間掛かっちゃった!」


テヘッってな感じで小首をかしげて笑う笑顔が眩しい。言葉が聞こえない範囲にいる偶々その笑顔を目にした若い男性がポ~っと見惚れている。うん、それ以上近寄って来ない方が無難だよ……。


「ちょっとちょっと、聞いちゃった!」


ビュッフェ形式のランチを山ほど乗っけたお盆をテーブルに置いて、私の隣に腰掛けるなりサクちゃんは私にその愛らしい顔をグッと近づけた。


「年下のイケメン外人―――弄んでいるんだって?」


ブッと思わず飲みかけの水を噴き出してしまった。


「うわっ……ちょっと、ミキちゃん……いい大人が何やってんの……」

「ごふっ……って、サクちゃんが変な事言うからでしょ!」


自分が原因のくせにサクちゃんは素でドン引きしている。私はポケットティッシュを取り出して、口元と自分のお盆を拭った。ハー……口にしていたの、水で良かった……。


「で、大学生だって?まさか未成年じゃないよね……?」

「それ何で……」

「コンちゃんに聞いたんだよ!でもどっちかってーと、コンちゃんが心配してたのはミキちゃんの方、だけどね」

「―――へ?心配って……」


あの時はそんな事言っていなかったのに。アレックスも学生にしてはキチンと挨拶できていて、むしろシッカリしている印象を与えたと思ったのにな。


「ま、それは置いといて。まずその彼―――『ナニジンなの?」

「日本人だよ」

「でも銀髪で、瞳は緑色だって聞いたよー?」

「だからハーフって言うか、最近はダブルって言うんだっけ?両親のどっちかがイギリス人らしくって国籍は二つあるらしいけど……日本で育っていてほぼ日本人なんだって。あと、未成年ではないから」

「ふーん」


サクちゃんはパクリとサラダを上品に口に運びつつ、目を細めて私の顔を眺めている。うっ……何にも悪い事していないのに、何だか居心地が悪いなぁ……。

パクパクサラダを口に運び、ペロリと唇を舐めてから彼女は楽しそうに呟いた。


「ミキちゃん、今まで年上しか付き合ったことないって言ってなかった?宗旨替えしたのかなぁ?」

「だから違うの!英会話の先生の代理で来た学生さんでね?映画の趣味があってちょっと仲良くなったってだけで……」

「へー……で、デートの約束でもしたの?スマホ見ながら、やけにニヤついてたけど」

「うっ……」


確かに楽し気にはしてました。

だって面白そうな映画だったし、趣味の合う人と一緒に観てその後お喋りに華を咲かせる予定なんだよ?ウキウキするのは仕方が無いよね。


まあ、確かにアレックスは美男子だから、眺めているだけで眼福って言うのはある。それに……


「デートではないんだけど……そう言えば男性と二人で出掛けるって行為自体、かなり久し振りだったかなぁ」

「ほほー……そりゃあ、コンちゃんも心配するわな?」

「え?コンちゃんが……ナニ?」

「ううん、えっとね。随分その彼氏、イケメンだったんでしょ?女の子侍らせてたって聞いたし。だからコンちゃん心配しているんじゃない?ミキちゃんがその年下のイケメンハーフに遊ばれちゃって、貢いじゃってボロボロになるんじゃないかって」

「はあ?!まさかぁ……!」


……あり得ない!


ペロリとアッと言う間に定食を平らげたサクちゃんは、腕組みをしてムフフと笑った。見た目だけは完璧可愛らしいのに、何だか笑顔がえげつなく見えるのは何故なのか。さてはサクちゃん、私を揶揄って遊んでるね?


「いやぁ、確かにその……かなり見た目は整っているし、スペック高そうな感じはあるけど―――基本、中身は普通の男の子だよ?むしろ映画オタクって感じで中身は地味かも。趣味に掛けるお金が足りなくて英会話講師の代理受けたくらいだし。結構イイ子だよ?そりゃ、私も最初はちょっと疑ったけど。モテそうって言うのは否定しないけど……遊び人とか人を食い物にするような子じゃないと思うな」


何よりあの、温和なアリスと家族ぐるみの付き合いなんだから、悪い子ではないはず。


「なるほど……」

「分かってくれた?」

「うん、分かった」


腕組みしたまま、外見にまるで似合わない漢らしい仕草でサクちゃんは頷いた。


「こりゃ、コンちゃんが心配する筈だわ」

「なんで?!」

「さあ、何ででしょー?」


それからケラケラ笑って、サクちゃんは立ち上がった。


「じゃ、仕事あるからもう行くね!」

「あっ……そうだ、この間サクちゃん行けなかった居酒屋、美味しかったよ。あそこでまた飲み会企画するね!」

「おう、ヨロシク!じゃあねん!」


サクちゃんは嵐みたいに去って行った。その姿はふんわりフェミニンな装いに反して、とても漢らしい。でも客観的な印象は真逆なはず。だってサクちゃんがお盆を持って通り過ぎると、若い男性は漏れなくポカンと見惚れてその背中を見つめて動かなくなってしまうから。


それにしても―――彼女が意味深に笑っていたのは何故なのか。面白がっているって言うのは分かるんだけど。何よりあの時割と普通にしていたコンちゃんが、私を心配していたって言うのが意外だった。アレックスが気になる?―――じゃなくて心配しているのかな?未成年じゃないかって誤解していて、私が条例違反するんじゃないかって実はハラハラしていたとか?もしかして。いや、大学生は十八歳以上だから大丈夫か……って、そう言う問題じゃないっ!


そう、アレックスは成人しているし、それにそもそも恋愛絡みじゃないんだからそんな心配無用なのにねぇ……。


もしかしてコンちゃんには違って見えたのかな?

私が『結婚』ネタに食いついたり、コンちゃんと遠距離彼女の仲を話題にして如何にも羨ましそうにしていたから―――ひょっとして飢えているように見えたのかな?『仕事があるから!』……なんて主張したから、返って強がっているように見えたのかも。




ホントーに飢えてないよ!仕事も忙しいし、趣味もあるし――一人で楽しくやってるもん……!




って吠えれば吠えるほど怪しいかなぁ……。


はぁあ……ちゃんと働いて、自分のお金で家賃も税金も年金も払って、積み立てもして―――その上で趣味に没頭している。満足しているんだけどなぁ……寂しい女に見えるのかしら?コンちゃんみたいな彼女と充実した関係を維持している人には!


でもコッソリ、サクちゃんに相談していたの、ちょっとショック。揶揄い口調でもイイから、私に直接言って欲しかったなぁ……だって、本当に切実に心配されてるみたいじゃん!これじゃあ!



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