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帰るまでが探索です  作者: 朝倉すずめ
4/6

冒険者だという二人組

声の主は、この町を拠点として活動している冒険者の中でも古株のマシューさんだった。


このダンジョンに足を踏み入れたことがある若者であれば、必ずお世話になっていると言っても過言ではない。もちろんサラサやトマも例にもれず幾度となくお世話になっている。


そんな世話好きなマシューさんは何をそんなに急いでいるのか挨拶もそこそこに、探索パーティーに連れて行って欲しい2人がいる、と少し後ろにいた男女のペアを振り返る。


「猫目の嬢ちゃんがレンジャーのサラサで、こっちのひょろ坊がアーチャーのトマ。まだ若いが、腕は確かなベテラン探索者だ」


紹介が終わるとともに条件反射で軽くお辞儀をしてしまうのは、マシューさんのしつけの賜物である。私たち二人の簡単な紹介が終わると、マシューさんは今度はこちらに向き直る。


「で、彼らは普段冒険者をしている女泣かせのガーディアンのサイラスと近寄りがたい別嬪さんがグラディエーターのリィンだ」


それぞれの枕詞に二人とも苦笑いを浮かべて軽く会釈しているのは、褒められているのか貶されているのか微妙なところだからだろう。マシューさんとかなり親しげな二人の年の頃は私やトマよりも少しばかり上のように見える。


マシューさんの話を継いで、リィンさんが、ちょっとこちらの方へ近づいて探索パーティーに加えて欲しい事情とやらを話し始める。彼女は、涼しげな目元にブロンドショコラ色のベリーショートの髪型がとてもよく似合っており、グラディエーターという勇ましいクラスであることも相まってちょっと近寄りがたい気もしていたが、話し声や表情がとても優しげだ。

サラサは、もし近所に彼女が住んでいたら絶対に『お姉さま』と呼んでいたと思う。


リィンさんの話をまとめるとパーティーメンバーのうち一人が大怪我、自分たちも少なくない傷を負ってしまってしばらくは冒険者を休業。メンバーの慰労と療養も兼ねてトマの出身町に湯治にやってきているらしい。ただあまり体を動かさないのも体がなまるのでリハビリを兼ねて探索をしようと思いついた、まではよかったそうだが、探索は冒険とは色々と勝手が違うということもあり、顔なじみのマシューさんに相談したところ今のこの状況に至るらしい。


「二人は冒険者だから、間違っても足手まといにはならないだろ。なっ?構わないだろう、な?」



いつもと違ってマシューさんがやたらと早口なのが気にかかっていると



「探索者は繋がりをとりわけ大事にするとは聞いていたけど」

こんなにもガードが固いなんて思ってなかった、とリィンさんが先回りして答える。



その二人の切実な表情でトマは状況を察し、同情的な表情を浮かべる。



(そりゃあ、身を守る術だもの)



探索者は、その特性から自分の住まいの近くのダンジョンに潜るため自ずと家族や友達、百歩譲ってその紹介といった繋がりでパーティーを組むことが多い。これは裏切りや略奪からのある程度の自衛と保証手段の一つでもあるし、何より短期間の仕事のために築きにくい信頼が初めからこそこ築けているところにメリットがある。


サラサは気の毒に思いながらも自分であっても他の探索者と同じ態度をとるだろうと曖昧な笑みを浮かべる。と、ふと目の合ったサイラスと呼ばれていた男性がぎこちなく笑い返してきた。

先ほどから殆ど会話に入ってきていないため気にしていなかったけれど、精悍という言葉がこんなにも似合う人がいたものなんだと感心してしまう。さらに檳榔子黒色の瞳と髪が少しセクシーだし、これはさぞかしもてるだろう。

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