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帰るまでが探索です  作者: 朝倉すずめ
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探索者はパートタイムジョブ


同じ迷宮ギルドに所属していてもダンジョン踏破を目指し、いくつものダンジョンを渡り歩くのは冒険者、一方、既に冒険者たちに攻略されつくしたダンジョンで、短い期間ダンジョンへ潜り、モンスターを倒した後のドロップアイテムや自生している動植物・鉱物等の採集に潜る者を探索者と呼び分ける。


このギルド構成員の呼び分けは、いくつか理由があるのだが、ダンジョンの何層まで進むことができる資格があるのか、この一点によるところも大きい。


おおよそのダンジョンは、出入口に近いところから表層・中層・下層の三つに分類されており、どこまで潜ることができるのかはダンジョン自らが行う試験と経験によって資格が与えられる。


表層へ潜る探索者資格は、運も探索における重要な才能として難易度がランダムな実技試験である。

だから表層の中でも最も安全な反1階であれば、子どもたちが今日のおやつ代のために笑樹をくすぐってはその木の実をせっせと採集するほのぼのとした光景をよく見かける。

また中層は、油断すればあっという間に命を失ってしまうため探索者の実績および経験によってのみ潜ることを許されるようになる。

そして下層に関しては、どんなに探索者としての実績があっても冒険者資格がなければダンジョンから拒まれる。


ちなみに冒険者たちは、探索者試験よりもより厳しい審査基準と過酷な試験をパスしているため資格をもっていればいきなり下層へと潜ることが出来る。



少し小難しい言い方をすると、ダンジョンはどんな大きさのものであれ、明確な意思とそれに見合う力がある。そして、ダンジョンがダンジョンであるための自衛手段や力の誇示のを示しているのがそこに棲むモンスター達と珍しい動植物やアイテムだ。

ただし、それが一方的に増えすぎるとダンジョンそのものに澱みがたまりすぎるため、それを適正量に保つ存在として探索者や冒険者がダンジョン内部に入ることを許されている。


ダンジョンとはそういうものであり、そこに在るモンスターも自らに潜る者も等しく共生関係なのだ。だからどちらかが一方的に減りすぎるのを防ぐためにダンジョン自らが試験を行い、時に入場制限をかける。

これが、ダンジョン入口に刻まれている古からの約定文の概要であり、身近なところでいうと迷宮ギルド所属時に必ず暗記させられる内容だったりする。




さらにはっきりとした取り決めがある訳ではないが、冒険者と探索者の間では住み分けを行っている。

探索者は、その空間構造が歪まない表層で一定の需要のあるもの、または空間構造の変成パターンが解明されている中層で希少性の高いものを採集するが、その内実、リスクの割にリターンが少ないと考えるものが殆どで中層に潜る者は割と少ない。

反対に冒険者はその冠された名前のごとく危険に満ちた体験の中に身を置くことを生き甲斐としているので、駆け出しであっても表層は素通りし、中層の中でも限りなく下層に近いフロアが冒険者ルーキーたちの出発点となっている。



サラサは、ここのダンジョン探索では、中層へ潜ることが許された探索者だ。

嫁入り前なのにと両親に心配をかけることもあるけれど『無理せず堅実に』をモットーとしてこのダンジョンには随分と稼がせてもらっている。


そもそも探索者稼業は、ダンジョン近くの市井の人々は生涯に一度は経験すると言われている人気のパートタイムジョブであり、実に様々な年齢層が従事している。

例えば、ようやく店の使い走りができる歳くらいの男の子から、日中は子供が学校に通うようになったために隙間時間のできた子育て中の母親、息子に代替わりした商店の店番を寝ているのか起きているのか分からないような姿で過ごすご老人と本人のやる気とちょっとした運次第でなんだかんだどうにかできてしまう職業であったりする。





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