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43.原作者に会ったぞ

「4280円になります」


 例の女性コンビニ店員から漫画と缶コーヒー、サンドイッチを受け取る。


 何で俺が一人でわざわざ駐車場の広いコンビニに来てるかというと、ファミレーマーツというコンビニチェーンで、今ならサラダボールプレゼントキャンペーンがやってるからだ。マリーがどうしても熊の絵が描かれたプレゼントキャンペーンのサラダボールが欲しいと言うから、仕方なしに此処へ来たというわけなんだよー!


 この近辺でファミレーマーツは此処しかない。何度も言うが此処しか無いんだよ!

 アニメ化したばかりという事もあって「魔人東京」の漫画が置いてたので、サラダボール貰える値段になるし買ってみたわけなのだよ。


 軽トラックに戻るとさっそく、「魔人東京」をビニール袋から取り出してみる。


 原作はえーと、トミー元......え? あの着流しのトミーさん?

 俺に悪夢を植え付けたあのトミーさんなのか! 一気に読む気力が無くなって来たが、せっかくだから少しだけ読む。


 アニメで見た通り、少し萌え絵感はあるものの細かい描き込みがされた美麗な絵だった。

 これは内容よりあれだな、漫画を描いてるふう先生の絵で売れてるね。


 主人公の前田アイが可愛い。少しタレ目に明るい茶色の髪を肩口で切り揃えた、胸はそれなりの少女。どこか咲さんにも似ている気がする。

 いつも革のジャケットに革のスカートで、黒いニーハイ姿というのも良い。

 ハードな服装の中にもジャケットの背中には、白のウサギマークが描かれいるところも可愛らしくて素敵だ。彼女は目を使った魔術を行使するカッコイイ女の子。そんなキャラクターだった。


 漫画に出て来る悪魔って、これモデル魔族なんじゃないの? クロみたいなケットシーとかマリーみたいな吸血鬼とか出てる。嗜好も似てるような。となると、前田アイに目を与えた魔王も咲さんに少し似ているんだろうか?

 作中の魔王は黒い影だけで表現されているから、咲さんと似ても似つかないけど......感情を食べるって恐ろしい設定があったけど、咲さんは何食べてるんだろ。

 記憶がおぼろげだけど、ゴミを黒い霧で覆っていた気がする......あの時は気絶したからあの後ゴミがどうなったのか見てないんだけど......あの宿、ゴミは出るけどゴミ出ししないんだよ。

 ひょっとして、咲さんが食べてるの? 感情を食べるんじゃなくて、ゴミ食べるの? ある意味エコだけど、怖えよ!

 しかし一度気になると、真相が知りたくなるな。


 勇人探偵、消えたゴミの謎を解明します!



◇◇◇◇◇



 軽トラックで宿まで帰った俺はさっそく謎に迫るべく、クソ猫を捜していた。謎の解明にはまず聞き込みだろう。え? 全く探偵してないじゃないかって? いやいや、効率重視だよ。

 俺は縁側で伸びている猫クロを見つけると、さっそく調査を開始する。


「クロ、ちょっと聞きたいことがあるんだが」


「なんでござるか? 吾輩の事? こ、興奮して来たでござる!」


 飛び込んでくる猫を手で払い、俺はコホンと咳払する。


「んとだな。宿に出たゴミがどうなってるか知ってるか?」


「ゴ、ゴミでござるか?」


「ああ。ゴミだ。ゴミ出しは分別しないといけないんだぞ」


「ゴ、ゴミは......」


 ブルブル震えだす猫クロ。


「ど、どうした?」


「吾輩、今日はよ、楊枝じゃなく用事が」


「用事何て今まであったっけ?」


「わ、吾輩。牛乳採ってくるでござる!」


 大混乱している様子で猫クロは走り去ってしまった。な、なんだ。ゴミに一体どんな秘密があるんだ。


 仕方無いので猫クロからの調査はあきらめて、マリーを捜す。ほどなく彼女は発見でき俺は調査を開始する。


「マリー。宿に出たゴミがどうなってるか知ってるか?」


「んー。ゴミ? んー」


 マリーまで誤魔化そうとしている! それほどの秘密なのか?


「ゴミだよ。ゴミ。分別も必要だろ?」


「んー。分別は必要ないと思うよー」


「一体ゴミはどうなってるんだ?」


「ダメ―。わたしからは言えないよー」


 取り付く島もなくマリーは、ばってんを手で作って去っていく。マリーもダメか。咲さんに直接聞くしかないのか?

 いや、まだ居るだろ。この宿には。



 そんなわけで親父さんのいる厨房にやって来ました。いつものごとく親父さんはオールバックのダンディな雰囲気で競馬新聞を読んでいた。しかし今日は一人ではない。怪しい着流しと談笑しているではないか。

 この着流しこそ、俺に性転換魔法を掛けやがった張本人――トミー元その人だ。せっかく会えたから、ゴミの前に「魔人東京」の事も聞いてみよう。


「トミーさん。魔人東京ってトミーさんが原作なんです?」


「おぅ。勇人。俺っちの作品読んでくれたのかい」


「あれって......」


「ああ。そのことか。何でわざわざ名前分けてんだってことだろ?」


「え? どういう?」


「その話じゃなかったのかよ。カー。まあいいか。ふうってのも俺っちだぜ」


「なんだってーー!!」


 あの萌え絵ながらも緻密で美麗な絵をこんな着流しが書いてるのかよ。正体は悪魔。あ、叶くんの下半身どうなったんだろ。まあ、原作者と声優で会うこともあるだろ。放置だ。要らぬことに突っ込んだ結果、前回性転換の被害にあったからな。

 触らぬ神に祟りなしってやつだ。


「ま、まあ。聞きたいことはそれだけです」


「そうかい。まあ魔人東京よろしくでい」


 トミー元さんはキセルをはたき、歌舞伎役者のような振りで決めポーズを取った。やっぱ濃いよ、この人。


「親父さん、宿のゴミってどうなってるんです?」


「......」


 親父さんが競馬新聞を落としてしまった。そんなショッキングな事だったのか?


「......勇人君。その話は私の口からは言えない」


「そ、そうですか......」


「ただ、君に覚悟があるなら知ることはできるがどうかね?」


「か、覚悟ですか......聞く勇気はあります」


「ほう。そうかねそうかね。行くかね!」


「行く? え?」


「そうだな。全員で行くかね。せっかくだからね」


「え? どこ行くんです?」


 待て。俺は一言もそんなこと言ってない。一体全員でどこに行くんだよ! お客さんどうすんだよおおお。


「あ、お客さんが来るか。仕方ない......私は行けないなあ。咲さんとクロとでも行くといい」


「え? えええええ?」


「咲さんには話を通しておくよ。準備したまえ」


 何処、何処に行くんですか? 俺。待って。いつも無茶振りだけど、目的地教えてくれよおおお。

 でも、咲さんは一緒に行けないと思うぞ。俺居なくなったら接客は咲さんしかできないだろお。

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