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アル中の歌  作者: 岩本翔
95/260

アルコール依存症95

「おいじじい、俺の愛しの婆さんは何処にいるのだ?!」と行雄は看守に向かって息巻いた。

量刑の事を告げて、立ち去ろとする看守に向かって行雄が息巻いた。





「おいじじい、俺の愛しの婆さんは何処にいるのだ?!」




看守が怪訝な顔付きをして振り返り言った。




「愛しの婆さん、何だそれは?」





行雄がむきになって主張する。




「易占いをする、優しい感じの婆さんだよ。お前らが捕らえている事は分かっているのだ、出せ!」




看守が抑揚の無い声で答える。





「そんな者は知らない」




成り行きを冷静に見守っていた悪友がここで仲裁に入るように言った。





「湖に入水して自殺したのでしょうか?」




看守が再度繰り返す。




「そんな者は知らない」




行雄が食ってかかる勢いで怒鳴る。




「あいつらは皆入水自殺したのだろう。だから俺の愛しの婆さんも入水して自殺したのだろう、違うのか?!」





間を置き看守が答える。





「あの者達は皆囚人だ」




悪友が冷静に尋ねる。




「それではあの者達は生きているのですね?」




看守が無関心な口調で答える。





「そうだ。お前らと同じく投獄され量刑が決まる」




行雄が怒鳴った。





「それじゃ婆さんも人食い鹿に食われる運命なのか?!」





看守が答える。





「知らない」

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