アルコール依存症93
「俺達は生きているのだから、それに感謝し、希望としての婆さんを、どうやって探し出すかを考えるべきだろう」と悪友は言った。
行雄が歎く。
「畜生、せっかく脱獄したのに、これでは元の木阿弥ではないか」
その言葉を聞き、悪友が簡易ベッドに腰掛け、息をつき言った。
「しかし俺達は生きるか死ぬかの賭けにはどうやら勝てたのだから、それは僥倖と呼べるだろう、違うか?」
行雄が渋面を作りながらも一つ頷き言った。
「と言うか、あんな酒で出来た湖の底に、こんな大規模な水中都市があるなんて、俺には到底信じられないわ。一体どうなっているのだろう?」
悪友が腕を組み言った。
「老人連合の自然としてのロボット的妄想幻覚装置が位相変位、感覚を狂わせたのだろう。そんな事よりも、俺達は生きているのだから、それに感謝し、希望としての婆さんを、どうやって探し出すかを考えるべきだろう」
行雄が嘆息してから言った。
「しかしそれ以前の問題として、俺達はここから出られかどうかが問題だよな?」
悪友が腕を組んだまま答える。
「いや、奴らはまだまだ俺達をいたぶり足りないのを鑑みると、俺達の助かる公算は高いと思うんだ」
行雄がけだるそうに簡易ベッドに悪友と同じように腰掛け、足を組んでから言った。
「それも又賭けだな」




