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アルコール依存症9
「その婆さん、誰よりも俺に優しかったのさ…」と行雄が言った。
悪友が言った。
「俺はネットで調べた半ば出鱈目な都市伝説というかジンクスだと思っていたのだが、そんな意味合いがあるとはな。しかしその婆さんにお前どうやって会ったのだ?」
行雄が答える。
「俺も自分が出鱈目な酒の飲み方をしているというのは知っているからな。だから自分の死期を知りたくて占って貰ったのだ」
「何処で?」
「駅さ。駅頭でその婆さん、易占いをやっていたのだ」
怪訝な顔付きをして悪友が尋ねる。
「何故お前はその婆さんに惚れたのだ?」
行雄がばつわるそうに微笑み答える。
「その婆さん、誰よりも俺に優しかったのさ…」