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アル中の歌  作者: 岩本翔
87/260

アルコール依存症87

俺はお前に生きて欲しいんだ。一緒に生きて、俺はずっとお前の悪友でい続けたいんだ!」と悪友は言った。

悪友が言った。





「おい、お前は俺の気持ちも少しは考えてくれ。俺はお前を死なせる為にこんな死地に赴いたわけではないんだぞ。俺はお前に生きて欲しいんだ。一緒に生きて、俺はずっとお前の悪友でい続けたいんだ!」




山林の中で悪友の手を無下に振りほどく事なく、やんごとなき風体のままに行雄が答える。





「残念ながら、お前との友情よりは、俺は愛しの婆さんとの愛を貫く事を優先したいんだ。お前には悪いけれどな、それが俺にとっては一番の幸せなんだ」




悪友が邪魔な濃霧を睨みつけながら再度言った。





「しかし婆さんは生きているかもしれないじゃないか。俺はそう感じるし、お前と一緒に俺はその目に賭けてみたいのだ」




行雄が嘲るように微笑みつつ言った。





「お前のインスピレーションは当たらないからな。だからこそこんな老人連合の罠に現在進行形で嵌まってしまっているし。あの湖に食われている連中は皆俺と同じアル中なのだろう。だから俺は婆さんが生きているとは思えないのだ。婆さんはあの湖に食われ、酒の中で俺を待っているのさ」





「おい、待てよ。婆さんもアル中なのか?」





行雄が鼻で笑う場面ではないのに鼻で一笑してから答える。





「いや、アル中ではないからこそ、婆さんはあの酒の湖に食われ、俺を待っているのさ。これが俺のインスピレーションなのだから仕方あるまい」





悪友が首を振りいみじくも言った。





「そんな出鱈目なインスピレーション俺は信じられない。婆さんは絶対に生きているんだ。それをお前は助ける為にここに来たのだろう、違うのか?」





行雄が再度鼻で笑い言った。





「それを信じられないからこそ、俺はあの湖に食われて、愛しい酒の婆さんと一体化したいのさ」

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