85/260
アルコール依存症85
「究極のマゾにだって友を助ける権利はあるだろう、違うのか?」と悪友は言った。
悪友が自嘲ぎみに一笑してから言った。
「この濃霧は酒で出来た幻覚剤なのか。幻覚剤自体が酩酊して幻覚剤になり、酒の湖を見せ、水の金属音を醸し出して、俺に脱力感を与えているから、俺の力は弱まっているのか?」
行雄が悪友の手を振りほどき、湖に逃げ込もうとするのを悪友が手を引き捕らえ、行雄がそれを歎く。
「全て究極のドラッグたる酒の申し子、俺自身の心が酒の中で行っている自殺実験なのだから、お前には一切関係なく、早く帰れと俺は言っているわけだ」
悪友が渾身の力で行雄を引っ張り言った。
「お前のモノローグが濃霧の幻覚剤で水の金属音を出す酒の湖の金属音的蟻地獄ならば、俺自身がそこに嵌まる喜びを表現して何処が悪いのだ?」
行雄が手を振りほどき泣き笑いの表情を浮かべ言った。
「お前は究極のマゾか?」
悪友が再度行雄の手を引っ張り、山林の奥深く誘い、答える。
「究極のマゾにだって友を助ける権利はあるだろう、違うのか?」




