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アルコール依存症81
「あの湖は優しい婆さんの酒で出来ているんだ」と行雄は言った。
行雄が言った。
「ちょっと待ってくれ。この湖が婆さんの優しい酒の誘いならば、俺は喜んで、この水の金属音に従いたいのだが、駄目か?」
悪友が行雄の言葉を大声で否定する。
「駄目だ。この湖は婆さんの酒なんかじゃない。俺達をいたぶり殺そうとする老人連合の罠だ」
行雄が半ベソをかき言った。
「しかし老人連合は俺達の心にも侵入し幻覚を引き起こす力を持っているのだから、俺達になんか勝ち目は無いじゃないか。違うのか?」
「諦めたら終わりだぞ!」
行雄が狂ったように一笑し言った。
「あの湖は優しい婆さんの酒で出来ているんだ。だから必ず俺は愛しの婆さんに会えるのだ」
悪友が声を限りに怒鳴った。
「おい、しっかりしろ!」




