アルコール依存症8
「何でも老人連合とやらの本部に居座っているらしいのだが、だからこそ俺は鹿を殺して、その婆さんん会いたいわけなんだ」と行雄は言った。
悪友が駄目を押す。
「美味い酒を飲んでいたければ生きていたいというのがお前の本音だろう?」
行雄が唸り声を一つ上げてから答えた。
「そりゃあそうだが、こんな世の中生きていたくないという願望も傍らにあるから、俺は酒を飲んでいるわけだし。だから生きてはいたいが死んでもいいやみたいな感じで、惰性で酒を飲んでいる側面もあるわけだし。よく分からんわ」
行雄の言い回しに悪友が引き攣るように笑い言った。
「お前好きな女はいないのか?」
行雄が照れ隠しするように微笑み答える。
「いる…」
「どんな女だ?」
行雄が再度微笑み答える。
「霊媒師の婆さんだ」
驚きの表情を作り悪友が尋ねる。
「婆さん、それでその婆さんはどこの霊媒師なんだ?」
渋面を作り行雄が答える。
「何でも老人連合とやらの本部に居座っているらしいのだが、だからこそ俺は鹿を殺して、その婆さんに会いたいわけなんだ」
再度悪友が驚き言った。
「何だ俺の提案には酒を止め、店が繁盛する他にそんな意味合いが有ったのか?」
行雄が頷き答える。
「そうだ。偶然の一致だがな…」