アルコール依存症79
「俺達は人造湖に食われ為に婆さんに呼ばれたのか?」と行雄が言った。
一つ生唾を飲み悪友が言った。
「ここは言わば人造湖で、水の金属音はこの湖から発しられているのだろうな、きっと」
行雄が狼狽しつつ尋ねる。
「しかしお前のインスピレーションに従えば、この人食い人造湖は老人連合が造ったものならば、この湖に婆さんが捕らえられているという事は既に婆さんはこの湖に食われていないという事なのか?」
黙考してから悪友が答える。
「現段階ではそれは分からないな。ただ俺のインスピレーションでは、あの水の金属音は婆さんが発しているものだという事だからな。だが心優しい婆さんが俺達を人食い湖に誘うわけはないし、これはやっぱり全て罠であり、俺達は錯覚を起こして、幻覚を見て、老人連合にいたぶらられているのかもしれないしな」
行雄が再度尋ねる。
「妄想や幻覚の中で俺達が死んでも、それは現実世界での死を意味するのだろうか?」
悪友が答える。
「発狂して狂い死ぬ運命だろうな。そうなるとこの水の金属音は人に幻覚を見せる幻聴の類いならば、この人造湖も、愛しい婆さんも全て幻覚となり、俺達そのものが幻覚から現実への死を跨ぎ、現実世界で犬死にする理となるのか…」
行雄がやる瀬なく微笑み言った。
「とにかく俺達はこの人造湖に飲み込まれないように、発狂しないように気をつけるしかないのか?」
悪友が言った。
「そうだな発狂しないように、気をしっかりと保つしかあるまいな」




