アルコール依存症76
「ならば手掛かりは、どうやって探すのだ?」と行雄は悪友に尋ねた。
疲労感に泥のように眠った後、二人が眠るテントは朝を迎え、悪友が先に起きて行雄を揺り起こし、二人はテントから濃霧立ち込める湖岸に立った。
そこで二人揃って水の金属音がするかどうか再び耳を澄まし、しない事を再度確認し、行雄が悪友に尋ねた。
「おい、これからどうするのだ?」
悪友が一つ欠伸をしてから答える。
「とりあえず湖に沿って湖岸を歩いてみよう」
行雄が戸惑い顔をして尋ねる。
「そんなので婆さんに辿り着くのか?」
悪友が朝の玲瓏なる空気を胸一杯に吸い込んでから答える。
「水の金属音は俺達を殺しに掛かりながらも、両刃の剣的に俺達をこの湖岸に誘ったわけだ。ならばこの湖畔に危険が潜んでいようがいまいが、婆さんを求めて探索するしかあるまい」
行雄が伸びをする仕種をしてから答える。
「分かった。ならばもう一度あの男が聞こえるようにすれば良いわけだな」
悪友が答える。
「いや、それはしても無駄だろう。リスクが大き過ぎるし、この湖畔に来たら止む可能性が高いからな」
「ならば手掛かりは、どうやって探すのだ?」
濃霧を食い入るように凝視してから悪友が答える。
「とにかく湖畔を歩いてみよう」




