アルコール依存症75
濃霧が立ち込める中、山林の急勾配を手探りでおそるおそる何とか下り切り、二人は湖岸に出た。
濃霧が立ち込める中、山林の急勾配を手探りでおそるおそる何とか下り切り、二人は湖岸に出た。
懐中電灯でそこが湖岸である事を再確認した刹那、追い掛けて来ていた水の金属音の音なき音が掻き消えた。
疲労困憊している行雄が汗を手の甲で拭い、耳を澄ましたまま訝る口調で言った。
「どうしてこうなるのだ?」
懐中電灯で濃霧に閉ざされた湖を照らし出しながら悪友が答える。
「分からない。しかしこの湖には婆さんに繋がる何かしらの手掛かりがあると俺は感じるのだ」
行雄が怪訝な顔付きをして唇を震わせながら言った。
「おい、こんなのは単なる何処にでもある湖じゃないか。この湖の何処に婆さんが隠れているというのだ?」
濃霧を振り払うように首を小刻みに左右に振り、悪友が瞬きもせずに答える。
「分からない。分からないが俺はそう感じるんだ。とにかく敵も襲って来る気配は無いし、ここにテントを張って朝が来るのを待とう。話しはそれからだ」
行雄が疲労を吐き出すように息をつき、眠気を帯びた声で答える。
「分かった…」




