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アルコール依存症72
「それも分からない。とにかく水に辿り着くのが先決だろう」と悪友が言った。
行雄が言った。
「しかし水の金属音が婆さんに繋がるものならば、この音は明らかに悪意そのものであり、俺に対する愛ではないよな。こうなると殺意としての愛が婆さんの愛なのか?」
濃霧を一度吸い込むように息をつき、悪友が答える。
「分からない。こんな不条理な事は言いたくはないが、水の金属音の攻撃が婆さんによってなされていようと、なされていまいと、それは関係なく、ここは水に辿り着けば、この音は止むと俺は感じるのだ」
行雄が言った。
「だとしたら水の金属音の婆さんの攻撃は、俺達を水に誘う善意という事か?」
「それも分からない。とにかく水に辿り着くのが先決だろう」
行雄が頷き答える。
「分かった」




