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アルコール依存症67
「しかし、婆さんは何処にいるのだろうか?」と行雄が息を弾ませながら悪友に尋ねた。
集めた登山用の装備を銘々ザックに背負い、二人は学校を後にした。
当然眼に見えぬ敵に尾行監視されている事は明白なので、二人はそれを意識しつつ山道を一歩ずつ踏み締めるように登り詰めて行く。
でっぷりとしていて、持病持ちの行雄が途中立ち止まり座り込み、吹き出す汗を拭い音を上げた。
「ふー、しんどいな。身体が重くて、息が切れて続かないわ」
悪友が声を大に励ます。
「おい、この程度で息が上がっていたら、先が思いやられるぞ?!」
気丈な悪友を見上げつつ行雄が言った。
「しかし、婆さんは何処にいるのだろうか?」
「そんなの俺には分からない。とにかくこの山を登り詰めたところに何かしらの手掛かりがあるかもしれないしな。とにかく先を急ごう」
行雄が急斜面の山道を恨めしげに見詰め言った。
「この山道が尽きたら、一体どうするのだ?」
悪友が息をつき答える。
「獣道を掻き分けて行くしかあるまい。行くぞ!」




