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アルコール依存症55
落石注意の警告を無視して走る悪友のジープに向かって猛スピードで落下する落石が狙いすますように直撃した。
深夜。
落石注意の警告を無視して走る悪友のジープに向かって猛スピードで落下する落石が狙いすますように直撃した。
拳大もあるであろう落石はジープの屋根を直撃し、その鈍い衝撃音は耳をつんざく程で、悪友は驚き咄嗟に急ブレーキを踏み、車を停止させた。
二人がジープから降り、悪友が梯子を跨ぐように昇り、へこんだ屋根を点検する。
「相当やられちまってるな。この落石は単なる偶然か?」
行雄が怪訝な顔付きをして言った。
「こんな夜中に老人連合の連中がこのジープ目掛けて石を落としたとでも言うのか?」
梯子から降り悪友が答える。
「組織立って動いているならば有り得る事じゃないか。違うか?」
行雄が鼻で笑い答える。
「馬鹿な。この峠道は言わば落石地帯だぞ。こんなの偶然に決まっているだろう」
悪友が深刻な顔付きをして深呼吸してからおもむろに尋ねた。
「ここは一旦引くか?」
事もなげに行雄が言い放つ。
「鹿を食う為にひたすら前進あるのみさ」




