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アルコール依存症5
「お前のアルコール音楽は演歌さ」と悪友は言った。
行雄が苦しい弁解を繰り返す。
「第一俺の酒は音楽なんだ。全身を巡る酒が程よいリズムを奏でていて、そのリズムが生きる活力というか、原動力となっているのだから、酒様々よ」
悪友が反論する。
「俺には程よいリズムには見えないがな。お前の動きはいつも酩酊状態で緩慢だし、若さが削げ落ちて行くようにしか見えないぞ。それは前向きな音楽とは言えまい」
行雄が眼を剥き言った。
「前向きな音楽で無ければ、俺の音楽のジャンルは何だ?」
「お前のアルコール音楽は演歌さ」
行雄が憤る。
「演歌の何処が悪い。演歌だって立派な音楽じゃねえか?!」
悪友が否定する。
「後ろ向きなだけの演歌はけして前向きではないからな。良いものではないだろう」