44/260
アルコール依存症44
「それに俺は外科病棟で、愛しい婆さんとあの鹿ジジイが話していたのを見たのだ。それにあの鹿ジジイは白衣を着ていたしな」と行雄が言った。
行雄がレーザーを照射されている眼で虚空をにらめつけ言った。
「それに俺は外科病棟で、愛しい婆さんとあの鹿ジジイが話していたのを見たのだ。それにあの鹿ジジイは白衣を着ていたしな」
悪友が驚く。
「待て、あの鹿爺さんが外科医だと言うのか?」
窮屈そうに車椅子に乗っている行雄が答える。
「そうだ。あのジジイはこの病院の要職についているジジイで、自分の故郷があの郷なのだろう、きっと」
悪友が信じられないという顔付きをして言った。
「そんな馬鹿な。この病院全体が老人連合の下部組織で鹿一匹の為にお前に復讐しようとしているのか?」
行雄が答える。
「そうだ。信じられないならば、お前も外科病棟に行って確認してみればいいじゃないか」
悪友が唸り声を上げてから嘆息交じりに答える。
「分かった」




