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アルコール依存症40
「だからこそ俺は希望に辿り着くんだ」と行雄は言った。
待合室で悪友が行雄に言った。
「お前退院した後それ以上酒を飲んだら足も切断、全盲になってしまうのだぞ。それでもいいのか?」
行雄が答える。
「だが、俺は酒を飲んだら希望を見出だせるんだ。だから酒飲まないとそれは絶望的だし、死んでいるのと同じじゃないか」
悪友が助言を繰り返す。
「何度も言うが、命有っての物種だろう。極論すれば命が無ければ酒だって飲めないではないか。その理屈は理解しているのか?」
行雄が満面に笑みを湛え言った。
「分かった。それじゃ俺は酒を飲む為に酒を止めよう」
「おい、いい加減にしろ。俺は期限付きの禁酒をしろとは言っていないぞ。あくまでも断酒をしろと言っているんだ。期限付きの禁酒ならば、元の木阿弥ではないか?!」
行雄が笑みを浮かべたまま言った。
「だから断酒をして、俺は希望に辿り着くのさ」
悪友が怒鳴った。
「その為にお前は酒を又飲むのだろう?!」
行雄が子供のように微笑み言った。
「だからこそ俺は希望に辿り着くんだ」




