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アルコール依存症39
「仕方ありません」と医師は悪友に言った。
行雄は店に休業届けを出し、障害者手帳を申請する傍ら生活保護を受給され、断酒を期して再び精神科の隔離病棟に入った。
医師が悪友に言った。
「このまま酒を飲み続ければ、足の切断や全盲の状態になる事も大いに考えられ、それを回避する為にはここで完全に断酒をしないと覚束ない状況ですね」
悪友が尋ねる。
「出来ますかね、先生?」
「予断は許せませんね。ただ…」
「ただ何でしょう?」
「ただここは刑務所とかではありませんから、状態が良くなれば本人の意思を尊重し、退院する運びになるのを強制的に引き止めるわけには行かないという事ですね」
悪友がため息をつき言った。
「でもそれでは元の木阿弥ではありませんか?」
医師が冷静な口調で言った。
「仕方ありません」




