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アルコール依存症3
「酒に魂を売った俺にはそんな資格すら無いと言っているじゃないか。絶望こそが我が妻、我が子よ。それ則ち希望ではないか」と行雄は言った。
悪友が辛口で言った。
「お前は酒に魂を売って、人生そのものを捨てるつもりなのか?」
行雄が酎ハイを飲み干してから答える。
「おうよ、酒は我が人生の最良の友ならば、その酒に魂を売ってどこが悪いのだ。逆に尋ねるが聞かせてくれ」
悪友が執拗に迫る。
「酒なんか飲んでいたって、お前に夢や希望なんか無いぞ。あるのは絶望だけじゃないか?」
行雄が大口を開き不敵に笑ってから答える。
「酒に魂を売った俺には正に酒こそが夢と希望の象徴となるのだ。例えばどんな惨めな結果になろうが酒に魂を売った俺には後悔する権利すら無いからな」
「惨めな結果になると分かっているならば、尚更酒は止めて、夢と希望に向かって邁進するべきじゃないか」
行雄が嘲笑い答える。
「酒に魂を売った俺にはそんな資格すら無いと言っているじゃないか。絶望こそが我が妻、我が子よ。それ則ち希望ではないか」