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アル中の歌  作者: 岩本翔
29/260

アルコール依存症29

「俺は酒に魂を売ったんだ。だから薬に魂売るつもりはささら無いわ」と行雄はうそぶいた。

食事をしてから安定剤を飲むの、行雄は精神科の閉鎖病棟に入室した。





薬の投与が続き鬱状態のまま行雄は眠ってばかりいる。





禁断症状が起きると注射が打たれ、病室に戻され眠るの繰り返しだ。




快適性を重んじた精神病棟は空調も程よくなされ、外部からの感染症を防いでいる分、患者は自分の病気を治す事に専念出来るのだが、薬に依って周期的に眠る患者が多く、各所に眠気が立ち込めるような雰囲気が漂い、どこか生気や精彩を欠き。静寂が満ちている中、悪友は休憩室にいる行雄を見舞った。





悪友が言う。





「どうだ、調子は?」





行雄が答える。





「眠っては味気ない飯食って、薬飲んでは又眠るの繰り返しだ」





「幻覚はなくなったのだろう?」





行雄がかったるそうに答える。





「ああ、だが酒は飲みてえな」





酒を嫌いになる弱い薬が効果を発していない事を訝り悪友が尋ねた。




「酒嫌いにならないと、もっと強い薬が投与されるはめになるぞ」





うんざりとした顔をして行雄が言った。





「アルコールは究極のドラッグじゃないか。そのアルコールを制するドラッグなんかあるのか?」





「だからアルコールを抜いて強い薬は投与されるのだろう。アルコールを取るか命を取るかのな?」





行雄が嘲笑い、うそぶくように言った。





「俺は命よりも酒を取るわ」





悪友が鼻を鳴らし言った。





「そんなのは実際命が取られた事が無いからの言葉だろう、違うか?」





行雄が再度うそぶく。





「俺は酒に魂を売ったんだ。だから薬に魂売るつもりはささら無いわ」

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