アルコール依存症260
「アル中治って美酒万歳じゃ。行雄よ」と婆さんが身代わり地蔵よろしく微笑み言った。
行雄が乗っている車椅子を押しながら婆さんが言った。
「どうじゃ行雄、老人しかいない社会でも、お前を助ける為に身代わりになる者もいる心意気がある、この都市こそが身代わり地蔵の優しさの真価、真髄だと思わないか?」
その言葉を聞いて、行雄がしきりに頷き答える。
「そ、そうだな婆さん、俺はこの街並全体が美味い酒に見えるよ。早く元気になって酒飲みてえよ」
行雄の傍らに付き添うように歩いている悪友が一声笑い言った。
「身代わり地蔵の街並の酒を飲めば、美酒爛漫に尽きる事この上無しか?」
婆さんが車椅子を押し出しながら和やかに笑い言った。
「身代わり地蔵美酒爛漫で行雄のアル中が早く治ればいいな?」
すかさず行雄が言った。
「お、同じく婆さんのアル中も治り、美酒を飲めば最高だぜ」
婆さんが言った。
「そうだな。皆で美酒を飲んで病魔退散じゃ」
悪友が笑い言った。
「結局酒飲んでアル中治らない美酒爛漫アル中万歳か?」
行雄が言った。
「アル中万歳だ」
婆さんが続ける。
「アル中治って美酒万歳じゃ。行雄よ」
亡くなった親友への鎮魂歌は私に取って希望に満ちた鎮魂歌になり、それを愛でるように美酒を飲み、アル中万歳と唱えつつ筆を置きます。拙著通読有り難うございました。m(__)m




