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アルコール依存症259
「さ、酒飲みてえ」と眼を覚ました行雄が吃りつつ言った。
行雄が眼を覚ました。
すかさず悪友が大声で叫ぶ。
「おお、眼が覚めたか!」
それを背中に聞いて、主治医が行雄の脈拍を計り、生命維持装置の動向を窺い、いみじくも言った。
「起き上がれますか?」
マスクをして酸素吸入している行雄が顎を引き頷くと、看護師が二人掛かりでマスクを外し、行雄を手際よく起き上がらせた。
そして行雄がしゃがれた声で吃りつつ言った。
「さ、酒飲みてえ」
その言葉を聞いて悪友が涙を流しながら大笑いして言った。
「おお、酒なんか生き返ればいくらだって飲めるぞ、相棒!」
その悪友を主治医が微笑みつつ諭した。
「いえ、まだ無理ですから」




