アルコール依存症254
「まあいずれにしろ身代わりの連鎖の果てに砂利や石ころの身代わりになる事だけを避ける事を祈りつつ、遅かれ早かれ身代わりになったり、身代わりを立てたりしか、俺達には残された存在理由、道はなく、覚悟を決めるしかないのか」と悪友は言った。
一拍置いてから悪友が言った。
「人間感覚の限界を由として、ならば俺は身代わりになるにしても、砂利や石ころの身代わりではなく、親友の身代わりになれる事を思うと行幸なのだな」
死刑囚が頷き同意する。
「それはそうだな。それは言わば美しい友情の結晶、最骨頂であり、あんたの魂は親友の中で生き続ける事が出来るのだから、それは最高の事じゃないか。それに比べたら俺なんか単なる現実逃避だからな…」
悪友がすかさず死刑囚き向かって言った。
「人間社会が作った勝ち組負け組の論理など横に均してしまえば均等で何も無い0基点ではないか。そこから逸脱する事に自己嫌悪を感じるのは、逆に言えばまだこの世に未練がある証拠なのではないか。それならば身代わりになるのは俺が正に相応しいな」
死刑囚が反論する。
「いや、未練は娘に対するものだけであり、それは最期の電話で解消したから、やはり身代わりは俺がなるしかあるまい」
押し問答になるのを避けるべく息を吐き出し、悪友が自嘲ぎみに微笑み言った。
「まあいずれにしろ身代わりの連鎖の果てに砂利や石ころの身代わりになる事だけを避ける事を祈りつつ、遅かれ早かれ身代わりになったり、身代わりを立てたりしか、俺達には残された存在理由、道はなく、覚悟を決めるしかないのか」




