アルコール依存症242
「そうだな。あんたには帰る家すら無いものな。それで自殺する願望を抱いてここに辿り着いた経緯を思うと、俺が我を張らずに、あんたに譲るのが筋道かな。どう思いますか、先生?」と悪友が尋ねた。
争奪戦に蹴りを付けるように死刑囚がしみじみと言った。
「俺は例えばこれで死刑を免れても、帰る家すら無い身だし、身代わりからはぐれてしまったら、どうしたら良いのだ?」
この言葉に悪友が我を取り戻したかのように優しく冷静な口調で言った。
「そうだな。あんたには帰る家すら無いものな。それで自殺する願望を抱いてここに辿り着いた経緯を思うと、俺が我を張らずに、あんたに譲るのが筋道かな。どう思いますか、先生?」
巫女が答える。
「私があなた方の心を開示して窺い知りたいのは、あなた方の心の発露が施された呪いに沿っているかどうかであり、感情的なものではなく、増してや憐れみや同情などでは無い事をここで改めて進言し、あなた方には先を続けて欲しいのです」
悪友が再確認するように尋ねる。
「今迄のそれぞれの事情や経緯、感傷的な同情などではなく、あくまでも為された会話が施された呪術に沿っているかどうかが決め手なのですね?」
巫女が答える。
「そうです」




