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アルコール依存症241
「適材適所と言う観点からすると、やはり俺が身代わりには絶対に相応しいと思う」と死刑囚は断言した。
話しに水を差すように巫女が言った。
「あなた方は身代わりになって死ぬ事を急いて競い合っているのじゃが、死ぬ事は安楽に非ず、漆黒の闇の尽きせぬ連鎖であり、その無なる常闇の連鎖は恐怖の半永久的な連鎖でもあるわけじゃ。それでも二人は死に急ぐわけじゃな?」
悪友が暫し間を置き言った。
「例えば死の実態がそうであろうとも、死ぬ覚悟はとっくに出来ており、後戻りなど出来ず、何を今更と言う感じでしょう。違いますか?」
死刑囚が同意する。
「その意見には俺も賛成だ。何を今更後戻りなど出来やしないさ」
ここでそれぞれの思惑が交錯する重苦しい沈黙が訪れ、それを死刑囚が破った。
「適材適所と言う観点からすると、やはり俺が身代わりには絶対に相応しいと思う」
悪友が否定を繰り返す。
「いや、その観点からも相応しいのは間違いなく俺だろう」




