アルコール依存症236
「さようなら、母さん」と悪友がわざとらしく笑いながら、底抜けに明るい口調で母親に別れを告げた。
死刑囚と同時進行で悪友が母親と話しをする。
母親が言う。
「あんた又旅に出るの?」
悪友が目頭に涙を溜めながら明るい口調で答える。
「母さん、俺旅先でいい人見付けて一緒になるかもしれないからさ。まあいつもの事だけれども、そうなったら当分連絡しないと思うんだよな。まあ母さんの事だから心配なんかしないと思うけれど、俺その人と添い遂げる為に、母さんの所には二度と連絡しないで縁を切るつもりなんだよ。母さん、だからそのつもりでいてくれよな。もう前の電話も無くしてしまったし、新たに電話なんか持つ気もないしな。母さん」
電話の向こうで母親がため息をつき言った。
「あんた何馬鹿な事言っているのさ。いい人見付けるって、その人まだ見つかっていないのでしょう。そんなのは見付けてから言いなさいよ?」
悪友が一声笑い答える。
「ピンポン。それは母さんの御指摘通りだな、母さん今日はやけに冴えているじゃないか?」
「私はいっだって冴えているのさ。又半年近く連絡もして来ないで、今度は仮定結婚の押し問答冗談かい、あんたという人は?」
悪友が再度笑ってからひたすら明るく言った。
「それじゃ、冗談きついついでに言っちゃをうかな、母さん?」
「何をさ?」
目頭の涙をひとしきり指で拭い泣き笑いの表情をして悪友が言った。
「俺仮定結婚の話しついでに、その人と海外移住するからさ、母さん、だから俺二度と連絡しないかもしれないから、そうなったら俺の事死んだと思って諦めてくれよな、母さん?」
「ああ、分かったわよ。あんたの好きにすればいいさ。骨も拾わないからね。そのつもりでね、ではさようなら」
悪友がわざとらしく笑いながら、底抜けに明るい口調で別れを告げた。
「さようなら、母さん」




