アルコール依存症230
「いえ、被害者であろうとも広範な意味では当事者には変わりありませんよね。それにこれは再三言っているのですが、先生が身代わりに死んでも、我々に未来などなく、惨めな死が待ち受けているのならば、我々には前途などなく、有望でも何でもありませんよね、先生?」と悪友が再度畳み掛けた。
婆さんが言った。
「しかし、あなた方はまだ若い。老い先短いわしが身代わりになって有望なる若者を生かすのが常道。それにあなた方二人が身代わりになっても、行雄が甦る確率は低いのじゃ…」
悪友が反論する。
「それはあくまでも確率の問題で、こいつが絶対に甦る可能性は、言ってみれば先生が身代わりになっても無いと言うか、絶対は有り得ないのですよね?」
婆さんが答える。
「それはそうじゃ。人間が為す物事に完璧は有り得ない道理じゃからな…」
悪友が再度畳み掛ける。
「ならば確率論の中で、自分達が身代わりになって死んでも、逆に言えばこいつは先生が身代わりになったのと同じ位には甦る可能性はありますよね、違いますか?」
婆さんが反論する。
「しかし今回の騒動に於いては、あなた方はあくまでも被害者であり、加害当事者では無いからな」
悪友が言って退ける。
「いえ、被害者であろうとも広範なる意味では当事者には変わりありませんよね。それにこれは再三言っているのですが、先生が身代わりに死んでも、我々に未来などなく、惨めな死が待ち受けているのならば、我々には前途などなく、有望なる若者でも何でもありませんよね、先生?」




