アルコール依存症229
「ならばこいつを生かす為に我々二人が身代わりになるのが順当な道筋ですよね、先生、違いますか?」と悪友は畳み掛けた。
婆さんが何かしらの返答を返す前に悪友が自分の話しの要旨を矢継ぎ早に並べ立てて行く。
「つまり自分が言いたいのは、先生が身代わりになって死んでも、こいつの命の保証は無いと言う事を言いたいわけです。違いますか?」
婆さんが銀髪の髪を一度撫でつけてから答える。
「それは理屈ではそうなるが、わしは身代わりになるに当たって、行雄やあなた方二人を解放するように厳命遺言を残して行くつもりなのじゃ」
悪友が首を振り息をつき反論する。
「でも先生の遺言が完璧に履行されると言う保証もありませんよね?」
婆さんが瞳の大きな双眸を見開き、瞬きを繰り返してから言った。
「それはそうじゃ。死人に口無しでわしの遺言が完璧に履行される保証は残念ながら無いじゃろうな…」
悪友が付け加える。
「例えば遺言を成文化して縛りを入れても、要人たる巫女二人を失った老人連合の憎悪がこいつ、及び自分達二人を厳罰に処し、結果我々は一人として生き残れないと思うのですが、違いますか?」
婆さんが恭しく頷き言った。
「その可能性も当然あるじゃろうな…」
悪友が畳み掛ける。
「ならばこいつを生かす為に我々二人が身代わりになるのが順当な道筋ですよね、先生、違いますか?」




