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アルコール依存症224
「いや、俺が死んだ方が先生が死ぬよりは、あいつにとってはまだ増しだろう…」と悪友は死刑囚に言った。
悪友が言った。
「しかし俺達はこの状況下では言わば被害者であり当事者ではないから、先生はその提案を了承しないだろう?」
死刑囚が否定する。
「いや、俺達もこの事柄が勃発するまでは死刑囚であった事には変わりなく、広範な意味では当事者と呼べると思うのだ。それに実際問題身代わりは二人必要であり、それにあんたの友達の事を考えると、そんな悠長な事言っていられないではないか。違うか?」
悪友が真顔でしきりに頷き、何か閃いた感じで答える。
「それはそうだが、先生とあんたを死なせる位ならば、俺も死ぬ覚悟はとうに出来ていたのだし、人数合わせで俺とあんたが二人で身代わりになるという手もあるのではないのか?」
逆に死刑囚が驚き慌てて否定する。
「それは駄目だろう。あんたが死んだら、例えば友達が甦っても、けして喜びはしないだろう」
悪友が言った。
「いや、俺が死んだ方が先生が死ぬよりは、あいつにとってはまだ増しだろう…」




