アルコール依存症221
予想以上に捜索がはかどらず、急遽病院長が悪友と死刑囚、二人を婆さんに引き会わせ、説得させる運びとなった。
予想以上に捜索がはかどらず、急遽病院長が二人を婆さんに引き会わせ、説得させる運びとなった。
病院長に付き添って、行雄が横たわる集中治療室の控え室に入った悪友が、婆さんに向かって慇懃に礼をつくした後用件を切り出した。
「すいません、こいつも心からそれを望むと思うのですが、出来る事ならば先生が身代わりとなるのを止めて、逃亡した者達を捕縛して身代わりにして欲しいのですが、どうでしょうか?」
婆さんが眼を細め熟慮する間を置いてから答える。
「それは出来ない。これまでの流れからして、身代わりの掟の中では、わしが身代わりとなることは必須条件であり、それをしないと行雄は甦らないのじゃ」
悪友が病院長に目配せしてから続ける。
「でも身代わりになる者は二人でよろしいのですよね。逃げた巫女は再度掟破りをしたのだし、その弟子も同罪ならば、身代わりに成り得るのではありませんか?」
婆さんが答える。
「そういう問題ではないのだ。わしも逃げた巫女も明らかに行雄が倒れる顛末を生んだ当事者であり、その二人が身代わりにならないと命を司る掟に背き、行雄は甦らないのじゃ…」
悪友が今度は死刑囚を一瞥してから言った。
「でもそれでは甦った行雄が余りにも悲しみますよね…」
車椅子に座っている婆さんが、そぞろ涙ぐみ行雄を慈しむように見遣り息をついてから言った。
「仕方ないのじゃ。掟には従わなければ、みすみす行雄を死なせる事になるからな。わしとしては一刻も早く逃げた巫女が捕まる事を祈るばかりじゃ」




