アルコール依存症220
看守長に引き連れられて悪友と死刑囚が水中都市のオフィス街を歩いている。
看守長に引き連れられて悪友と死刑囚が水中都市のオフィス街を歩いている。
空の部分を覆うガラス面から地上を照らし出す光りが発している。
人工的に作られた瀟洒で明るい町並みは端正に整備されていて、そこに老朽化が忍び込む綻びは全く無いように見える。
だが街中にいる非常時配備されている大勢の警官達は明らかに老人だけであり、彼らは法に従って規律正しく行動しているのだが、そこには真逆に明らかに老いが見え、やがて訪れる死の陰がそこはかとなく見え隠れしており、整然とした町並みとのコントラストの中で、アンバランスな感じを醸し出しているのは否めない。
万物流転の法則を、まるで無視しているように見える堅牢なる建物も、その威容さ故に逆にやがて消え去るはかなさをを内包しており、それが老人中心社会の寂しさ、はかなさを窺わせている。
看守長が携帯電話に向かって居丈高に怒鳴る。
「どうだ、見つかったか?!」
相手の反応が芳しくないのに、改めて「時間が無い、急ぐんだ!」とげきを飛ばす看守長の声に、悪友と死刑囚はほぼ同時に固唾を飲み、息をつき眼を見張った。




