アルコール依存症219
「分かりました。潔く自分を身代わりにして友達を助けようとする婆さんを我々が助ければ、友達もきっと喜ぶだろうし、我々二人にとってもそれは大いなる喜びであり、微力ながら出来る限り協力しましょう」と悪友は現れた病院長と看守長に向かって言った。
悪友と死刑囚の許に青ざめた顔付きをした病院長と看守長が二人現れた。
そしておもむろに病院長が告げる。
「あなた方を死刑にしようとした巫女が弟子を一人引き連れ逃げたのだ。逃げた二人を捜索して、あなた方の友達の身代わりにすれば、我々にとっても掛け替えの無い先生が身代わりにならずに済かもしれないのだが、協力してくれないかね?」
皆目事の経緯、事情を知らない悪友が死刑囚と顔を見合わせ、首を傾げてから尋ねる。
「すいません、何を言っているのかさっぱりと分かりません。分かるように具体的に説明して下さい?」
病院長が「分かった」と言い悪友と死刑囚が知らないこれまでの経緯、事情を大まかに話してから、自分の言いたい要旨を要約して説明する。
「然るに、あの巫女は逃亡する事に依って又しても絶対の法たる掟を破ったわけだ。だからあなた方の友達の身代わりになって死刑になるのは、あの逃亡した二人で良いわけであり、あの二人を捕まえるのに、あなた方にも協力して貰い、捕縛した時点で、それをあなた方の功績と為して、あなた方が友達の恋人たる先生を、逃亡した二人を死刑執行にするように鋭意翻意させて欲しいのだ」
合点が行き悪友が相槌を打ってから言った。
「つまり我々二人が、その逃亡した者を捕まえるのに協力して、捕まった暁には、友情の証として、その捕縛劇に自分達も協力した事を友達の恋人たる婆さんに告げ、婆さんに自分が身代わりとなる決意を翻意させれば良いのですね。でも実際問題友達も危篤状態で一刻の猶予もならず、その逃亡した二人は直ぐさま捕まるのですか?」
この質問には看守長が答える。
「大丈夫だ。海に通じるゲートは全て封鎖し、至る所に捜索隊を配備したからな。後は街中を人海戦術を使って隈なく捜索すれば絶対に捕まる筈なんだ」
ここで満を持したように死刑囚が言った。
「そこまでしているならば我々の手なんか必要では無いでしょう、違いますか?」
再び病院長が言った。
「いや、あなた方の美しい友情の証が、絶対無二の法、掟に風穴を開け、先生を説得出来る材料となるのだ」
悪友が恭しく頷き言った。
「分かりました。潔く自分を身代わりにして友達を助けようとする婆さんを我々が助ければ、友達もきっと喜ぶだろうし、我々二人にとってもそれは大いなる喜びであり、微力ながら出来る限り協力しましょう」




