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アルコール依存症218
何処まで逃げられるかは分からないが、とにかく逃げようと老婆は身支度を始めた。
無念さに涙ぐみつつ身辺整理をしながら老婆は考える。
確かに施した呪術は部分的に失敗はしたのだが、結果として先生は甦ったのだ。
それは明らかに自分の功績であり、その結果先生の恋人たる男が瀕死の状態になったとて、それは身代わりとしての定めであり、その責任をとって自分が死刑になるのは、どうあっても納得が行かない。
しかし掟は掟であり、先生の命令は絶対である以上、それに背くわけには行かない。
どんなに納得の行かない顛末であろうとも受け入れなければならない過酷な現実。
それを思うと熱い涙が次々と溢れ出て来る。
老婆はその悔し涙を手で拭い、思った。
逃げようと。
何処まで逃げられるかは分からないが、とにかく逃げようと。
老婆はそう決め、身辺整理を止め、逃げる為の身支度を始めた。




