アルコール依存症217
「身代わりとなる者はわしとお前じゃ」と婆さんが老婆を指差し告げた。
婆さんが続ける。
「この者を蘇生させるにしても、ぐずぐずとしてはいられない。身代わりになる者は二人必要だ。当然この局面ではわしが身代わりとなる事は自明の理なのじゃが、もう一人は」と言っておもむろに老婆を指差し「お前だ」と言い放った。
名指しされた老婆が頭を垂れたまま不承不承返事を返す。
「は、はい…」
婆さんが続ける。
「これは事の発端を作った当事者二人の選抜であり、言ってみれば正当な選定と呼べるじゃろう。お互いに身辺整理をした上で、直ぐさま死刑執行とする運びとしよう」
服従していた老婆がここで初めて異議を唱えた。
「しかし先生、私はあくまでも先生を甦らせる為に行った身代わりの儀式であり、それが間違いを犯し、自分が身代わりとなって死刑執行されるのは、どうあっても不本意なのですが…」
婆さんが再度感謝の意を顕し言った。
「甦らせてくれた事には本当に感謝している。だからこそ、わしもその間違いの当事者として責任をとり、この者を甦らせる為に一緒に身代わりとなると言っておるのじゃ。無念じゃろうが掟は従わなければならぬ掟なのじゃ。じゃから身辺整理を急ごうではないか」
老婆が眉をひそめつつ再度頭を垂れ言った。
「かしこまりました…」




