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アルコール依存症213
悪友と死刑囚の心にいたたまれない不安と憔悴感が広がって行く。
行雄の安否を気遣いナースコールを押しても、応答がなく、悪友と死刑囚の心にいたたまれない不安が広がって行く。
うろたえつつ死刑囚が尋ねる。
「あれは危篤状態だろう、あんたの友達は死ぬのか?」
緊迫感を噛み締めるように悪友が首を振り答える。
「分からない。ただ…」
言葉に詰まった悪友を死刑囚が促す。
「ただ、何だ?」
悪友が胸騒ぎを抑える為に深呼吸してから答える。
「奴らは、死刑執行が出来なくなるから、あいつを何とか蘇生させようと、必死になると思うのだ」
死刑囚が訝る。
「それはどうしてだ?」
間を置き悪友が答える。
「今迄の流れからすると、多分あいつの意識が戻らないと死刑執行の意味合いと言うか、呪術の効果がなくなるのではないかと俺は思うのだ」
死刑囚が怪訝な顔付きをしたまま首を傾げ尋ねる。
「ならば友達は死なないのか?」
悪友が再度首を振り答える。
「それは俺には分からない。奴ら次第だと思う…」




