アルコール依存症212
「何が何でも、あの者の意識を戻すのじゃ。それが出来なければ、お前の命は無いと思え!」と老婆が行雄の主治医を恫喝した。
会議室の中で行雄の主治医と老婆が角を突き合わせるように話し合う。
頭の禿げた医者が言った。
「先生、あの者は危篤状態と言えます。ですから、そのまま死刑を執行するしかないのではありませんか?」
先生と呼ばれた老婆が尊大なる態度のままに言った。
「いや、あやつに意識が無ければ、死刑執行を断行しても無駄なのじゃ。彼女は甦らない。だから必ずや、あやつの意識を取り戻すのじゃ。分かったな?」
医者が息をつき答える。
「しかし、あの者は脳梗塞だけではなく、心臓、腎臓もやられており、若くて体力があるから持っているようなもので、病状が回復する見込みは、ほぼ無いと言えるのですが…」
老婆が医者を鋭い眼差しで睨みつけ恫喝した。
「それではここまで呪術を組み立てて来た意味が無いではないか。何が何でも、あの者の意識を戻すのじゃ。それが出来なければ、お前の命は無いと思え!」
医者が小刻みに震えながら答える。
「はい、最善は尽くします、先生」
老婆が再度恫喝した。
「最善ではない。絶対に意識を回復させるのじゃ。分かったな!」




