表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アル中の歌  作者: 岩本翔
209/260

アルコール依存症209

「ば、婆さん、俺だよ。行雄だよ。婆さん、俺と一緒に婆さんはよく酒を飲んでくれたじゃないか、婆さんは俺に誰よりも優しくしてくれたじゃないか、婆さん、思い出してくれよ、お願いだから、婆さん?!」と行雄が涙ながらに訴えた。

三人が老婆と大勢の看守に引き連れられて、警察病院の別病棟に移され、老人病棟の個室に連行されると、そこには行雄が捜し求めていた婆さんが車椅子に乗り待ち受けていた。




だがその婆さんは明らかに痴呆の様相を呈しており、麻痺した顔面がいびつに曲がっていて、かつて行雄の知っていた婆さんとは全く別人であり、瞬きもせずに狂ってぼんやりとした目付きをして行雄を凝視し、言った。





「あんた、誰だ?」




思わず行雄は婆さんに平伏すように泣き崩れ声を限りに喚いた。





「ば、婆さん、俺だよ、婆さん、行雄だよ、婆さん?!」





婆さんが怪訝な顔付きをして言った。





「行雄、わしはそんな者知らんぞ。あんた誰だ?」




行雄が涙ながらに訴える。





「ば、婆さん、俺だよ。行雄だよ。婆さん、俺と一緒に婆さんはよく酒を飲んでくれたじゃないか、婆さんは俺に誰よりも優しくしてくれたじゃないか、婆さん、思い出してくれよ、お願いだから、婆さん?!」





瞬きもしないまま婆さんがいきなりにんまりとしてから言った。





「あんた俺に酒を飲ませてくれるのか。だったらあんたは何ていい行雄とかいう人なんだろう。まるで仏様のようじゃ」





そう言って婆さんがにんまりとしたまま行雄に向かって合掌するのをを見て、行雄は感極まり再度叫んだ。




「婆さん!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ