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アル中の歌  作者: 岩本翔
205/260

アルコール依存症205

「そ、そうだ。と言うか俺は自分を犠牲にしたから、それで婆さんが助かるとか、そんな偉そうな事は一切考えずに、とにかく死ぬ前に純粋に婆さんに一目会いたいだけなんだ」と行雄が吃りつつ言った。

耳をそばだてて二人の話しを聞いていた行雄がいみじくも言った。




「ふ、二人が俺の最期の願いを達成出来るように親身になってくれた事に俺は感謝するべきなのだろうな…」





悪友が行雄の意見に応じる。




「だがその為にお前自身の本当の願いと言うか、婆さんに対する気持ちを変えて、最期の願いを決定すると言うのは、俺に取っては不本意な事柄だと思うのだ」




行雄が一度深呼吸してから言った。





「よ、よく考えてみたのだが、お、俺の最期の嘆願と言うか気持ちは、純粋に婆さんに一目会いたいという事に尽きると思うのだ…」




ここで行雄の言葉が静寂に溶け込み、その静寂が深まるような沈黙が続いた後、行雄が続ける。




「だ、だから俺は婆さんを助けるとか、そう言った事を度外視して、じゅ、純粋に婆さんに一目会いたいと言うのが俺の願いであると、わ、分かったのだ」




悪友が冷静な口調で尋ねる。





「それは婆さんが別人に変貌していても一目会いたいという事をお前は言いたいのか?」





行雄が吃りつつ答える。





「そ、そうだ。と言うか俺は自分を犠牲にしたから、それで婆さんが助かるとか、そんな偉そうな事は一切考えずに、とにかく死ぬ前に純粋に婆さんに一目会いたいだけなんだ」




悪友が念を押す。





「もう一度尋ねるが、本当に婆さんが別人に変わっていてもお前はいいと言うのだな?」




行雄が答える。





「な、何度も言うが、そんな事柄は関係なく、俺の最期の願いは婆さんに一目会いたいという事なのだ。そ、それに尽きると言うのがよく考えた末に分かったのだ」

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