アルコール依存症202
「いや、相手が全くの別人に変貌してしまい、助けてやりたいと思う気持ちが失せるのは、愛の失せた証ではなく、自分の命を守りたいという自己保存本能の顕在化だと俺は思う」と悪友が死刑囚の意見に反論した。
長い沈黙を置いてから行雄が再度尋ねる。
「ば、婆さんではない別人の婆さんに会って、俺の婆さんの為に死ぬと言う気持ちが失せたら、それは俺の愛が本当の愛では無いという証になるのか…」
死刑囚が答える。
「俺はそうだと思う」
悪友が死刑囚の意見に反論する。
「いや、俺はそれは違うと思う。お前はお前の知っている愛しい婆さんに惚れたのであり、その愛しい婆さんが全くの別人ならば、お前の死ぬ気が失せたって、それはお前の愛が偽物だという事には繋がらないと俺は思う」
死刑囚が反論する。
「でも一面的なイメージが崩れただけで、命を助けてやりたいという気持ちが失せてしまうのは、深い愛とは言えないだろう、違うかな?」
悪友が反論を重ねる。
「いや、相手が全くの別人に変貌してしまい、助けてやりたいと思う気持ちが失せるのは、愛の失せた証ではなく、自分の命を守りたいという自己保存本能の顕在化だと俺は思う」




