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アルコール依存症198
「つまり婆さんはお前の知っている愛しい婆さんではなく、まったく別人であり、敢えて酷な事を言えば、死に損ないの痴呆婆さんと言う事になるわけだ…」と悪友は言った。
悪友が続ける。
「つまり婆さんはお前の知っている愛しい婆さんではなく、まったく別人であり、敢えて酷な事を言えば、死に損ないの痴呆婆さんと言う事になるわけだ…」
口惜しそうに行雄が涙を拭い言った。
「そんな分かり切った事を言うな。お前は俺と婆さんをどうしても会わせたくないのか?」
悪友が首を振り言った。
「いや、違う」
再度手の甲で涙を拭い行雄が辛そうに顔をしかめ尋ねる。
「ならば何が言いたいのだ、お前は?」
悪友が一度息を吐き出してから答える。
「お前が全く別人の婆さんに会えば、お前の婆さんの為に死んでもいいという気持ちは変わると俺は思うのだ」
行雄が頬を引き攣らせ尋ねる。
「何故お前はそう言い切れるのだ?」
悪友が伏し目がちに答える。
「お前の愛しい婆さんが全くの別人であり、お前の愛おしさが失せてしまうからだ」




