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アル中の歌  作者: 岩本翔
197/260

アルコール依存症197

「そうだ。会ってもお前が余計辛くなるだけだと俺は思うのだ」と悪友は涙ぐみつつ行雄に告げた。

老婆が立ち去った後悪友がおもむろに言った。




「やはりお前の婆さんはお前に会えない寂しさ、家族とはぐれてしまった寂しさからアル中に陥り、糖尿病を患って脳卒中で倒れたのか…」




それを聞いて行雄が熱い涙を止めどなく流しつつ嗚咽した。





そんな行雄を安易に慰めたりはせずに悪友が続ける。




「婆さんには、想像を絶する程の闘病履歴と、苦悩苦痛、精神的葛藤があったと思うのだ。そして婆さんはお前が自分の犠牲になって死刑になる事すら知らないと思うのだ…」




行雄が涙を流しつつ反論する。





「そ、そんなの知らない方がいいに決まっているじゃないか、そ、そんなの知ったら婆さんは余計悲しむだけじゃないか」




悪友が否定する。





「いや、婆さんは痴呆状態なのだから、お前に会っても、お前である事すら分からず、多分悲しんだりはしないだろう。だから…」





行雄が泣きながら喚く。





「だ、だからどうしろと言うのだ?!」





悪友が涙ぐみつつ意を決するように告げる。




「だから一目会っても、婆さんはお前の存在すら分からないという事さ」





行雄が泣きながらいきり立つ。





「だから一目会うのは諦めろと、お前は言いたいのか?!」





悪友が恭しく頷き答える。





「そうだ。会ってもお前が余計辛くなるだけだと俺は思うのだ…」

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